説明

フェノール性オピオイドの放出が減弱された医薬組成物

医薬組成物およびそれらの使用方法が提供され、ここで、医薬組成物は、フェノール性オピオイドの酵素制御放出を提供するフェノール性オピオイドプロドラッグ、およびプロドラッグの酵素切断を減弱するように、プロドラッグからのフェノール性オピオイドの酵素制御放出を仲介する酵素と相互作用する酵素インヒビターを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年10月17日に出願された米国仮特許出願第61/106,400号明細書の米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
緒論
フェノール性オピオイドは乱用され易い。従って、これらの薬物のへのアクセスを制御する必要がある。薬物へのアクセスを制御すると、投与に費用がかかり、そして投薬のために姿を現すことができない患者の治療は拒否され得る。例えば、急性の疼痛を患う患者は、彼らが病院に入院しない限り、オピオイドによる治療は拒否され得る。
【0003】
国際公開第WO2007/140272号パンフレットは、フェノール性オピオイドの制御型放出を付与する所定のプロドラッグについて記載している。プロドラッグは、乱用に対して抵抗性であり、酢または重曹のような家庭用化学品の存在下で安定であり、そしてフェノール性オピオイドの放出を開始するために、消化管において酵素活性化を必要とする。プロドラッグは、酵素活性化環化放出機構を介してフェノール性オピオイドを放出すると考えられる。それ故、アミド結合の酵素誘導性切断は、求核性窒素原子を付与し、次いで、環化放出反応を経験すると考えられる。
【0004】
国際公開第2007/140272号パンフレットに記載のプロドラッグは、薬物の乱用を求める者が一般的に使用する条件に供される場合、フェノール性オピオイドの放出に抵抗性を示すが、経口的に投与される場合、フェノール性オピオイドを放出する。これは、乱用に対して実質的な保護を提供する。しかし、乱用によるものであれ、または偶発的な過剰消費によるものであれ、そのようなプロドラッグの経口での消費が、フェノール性オピオイドへの過剰暴露を潜在的に生じ得る状況が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
本開示物は、医薬組成物およびそれらの使用方法を提供し、ここで、医薬組成物は、フェノール性オピオイドの酵素制御放出を提供するフェノール性オピオイドプロドラッグ、およびプロドラッグの酵素切断を減弱するように、プロドラッグからのフェノール性オピオイドの酵素制御放出を仲介する酵素と相互作用する酵素インヒビターを含んでなる。
【0006】
従って、一態様に従えば、本発明の実施形態は、トリプシンインヒビターおよび一般式(I):
X−C(O)−NR−(C(R)(R))−NH−C(O)−CH(R)−NH(R
(I)
の化合物またはその薬学的に許容できる塩を含んでなる医薬組成物を含み、式中:
Xは、フェノール性オピオイドの残基を表し、ここで、フェノール性水酸基の水素原子は、−C(O)−NR−(C(R)(R))−NH−C(O)−CH(R)−NH(R)に対する共有結合によって置き換えられ;
は、(1−4C)アルキル基を表し;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子または(1−4C)アルキル基を表し;
nは2または3を表し;
は、−CHCHCHNH(C=NH)NHまたは−CHCHCHCHNHを表し、Rが付着する炭素原子の配置は、L−アミノ酸における配置に対応し;かつ
は、水素原子、N−アシル基、またはアミノ酸の残基、ジペプチド、あるいはアミノ酸もしくはジペプチドのN−アシル誘導体を表す。
【0007】
本実施形態は、トリプシンインヒビターおよび一般式(II):
X−C(O)−NR−(C(R)(R))−NH−C(O)−CH(R)−NH(R
(II)
の化合物またはその薬学的に許容できる塩を含んでなる医薬組成物を含み、式中:
Xは、フェノール性オピオイドの残基を表し、ここで、フェノール性水酸基の水素原子は、−C(O)−NR−(C(R)(R))−NH−C(O)−CH(R)−NH(R)に対する共有結合によって置き換えられ;
は、アルキル、置換アルキル、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールおよび置換アリールから選択され;
各Rが、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アシル、およびアミノアシルから独立して選択され;
各Rが、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アシル、およびアミノアシルから独立して選択されるか;
あるいはRおよびRは、それらが付着する炭素と共に、シクロアルキルまたは置換シクロアルキル基を形成するか、あるいは隣接する炭素原子上の2つのRまたはR基は、それらが付着する炭素原子と共に、シクロアルキルまたは置換シクロアルキル基を形成し;
nは2〜4の整数を表し;
は、−CHCHCHNH(C=NH)NHまたは−CHCHCHCHNHを表し、Rが付着する炭素原子の配置は、L−アミノ酸における配置に対応し;かつ
は、水素原子、N−アシル基(N−置換アシル誘導体を含む)、アミノ酸の残基、ジペプチド、アミノ酸もしくはジペプチドのN−アシル誘導体(N−置換アシル誘導体を含む)を表す。
【0008】
本実施形態は、トリプシンインヒビターおよび一般式(III):
X−C(O)−NR−(C(R)(R))−NH−C(O)−CH(R)−NH(R
(III)
の化合物またはその薬学的に許容できる塩を含んでなる医薬組成物を提供し、式中:
Xは、フェノール性オピオイドの残基を表し、ここで、フェノール性水酸基の水素原子は、−C(O)−NR−(C(R)(R))−NH−C(O)−CH(R)−NH(R)に対する共有結合によって置き換えられ;
は、(1−4C)アルキル基を表し;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子または(1−4C)アルキル基を表し;
nは2または3を表し;
は、−CHCHCHNH(C=NH)NHまたは−CHCHCHCHNHを表し、Rが付着する炭素原子の配置は、L−アミノ酸における配置に対応し;かつ
は、水素原子、N−アシル基(N−置換アシル誘導体を含む)、アミノ酸の残基、ジペプチド、アミノ酸もしくはジペプチドのN−アシル誘導体(N−置換アシル誘導体を含む)を表す。
【0009】
本実施形態は、トリプシンインヒビターおよび一般式(IV):
【化1】

の化合物またはその薬学的に許容できる塩を含んでなる医薬組成物を提供し、式中:
は水素またはヒドロキシルであり;
はオキソ(=O)またはヒドロキシルであり;
点線は二重結合または単結合であり;
は、(1−4C)アルキル基を表し;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子または(1−4C)アルキル基を表し;
nは2または3を表し;
は、−CHCHCHNH(C=NH)NHまたは−CHCHCHCHNHを表し、Rが付着する炭素原子の配置は、L−アミノ酸における配置に対応し;かつ
は、水素原子、N−アシル基、またはアミノ酸の残基、ジペプチド、あるいはアミノ酸もしくはジペプチドのN−アシル誘導体を表す。
【0010】
本実施形態は、トリプシンインヒビターおよび一般式(V):
【化2】

の化合物またはその薬学的に許容できる塩を含んでなる医薬組成物を提供し、式中:
は水素またはヒドロキシルであり;
はオキソ(=O)またはヒドロキシルであり;
点線は二重結合または単結合であり;
は、アルキル、置換アルキル、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールおよび置換アリールから選択され;
各Rが、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アシル、およびアミノアシルから独立して選択され;
各Rが、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アシル、およびアミノアシルから独立して選択されるか;
あるいはRおよびRは、それらが付着する炭素と共に、シクロアルキルまたは置換シクロアルキル基を形成するか、あるいは隣接する炭素原子上の2つのRまたはR基は、それらが付着する炭素原子と共に、シクロアルキルまたは置換シクロアルキル基を形成し;
nは2〜4の整数を表し;
は、−CHCHCHNH(C=NH)NHまたは−CHCHCHCHNHを表し、Rが付着する炭素原子の配置は、L−アミノ酸における配置に対応し;かつ
は、水素原子、N−アシル基(N−置換アシル誘導体を含む)、アミノ酸の残基、ジペプチド、アミノ酸もしくはジペプチドのN−アシル誘導体(N−置換アシル誘導体を含む)を表す。
【0011】
本実施形態は、トリプシンインヒビターおよび一般式(VI):
【化3】

の化合物またはその薬学的に許容できる塩を含んでなる医薬組成物を提供し、式中:
は水素またはヒドロキシルであり;
はオキソ(=O)またはヒドロキシルであり;
点線は二重結合または単結合であり;
は、(1−4C)アルキル基を表し;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子または(1−4C)アルキル基を表し;
nは2または3を表し;
は、−CHCHCHNH(C=NH)NHまたは−CHCHCHCHNHを表し、Rが付着する炭素原子の配置は、L−アミノ酸における配置に対応し;かつ
は、水素原子、N−アシル基(N−置換アシル誘導体を含む)、アミノ酸の残基、ジペプチド、アミノ酸もしくはジペプチドのN−アシル誘導体(N−置換アシル誘導体を含む)を表す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、化合物1単独およびGlycine max(ダイズ)(SBTI)由来の様々な量のトリプシンインヒビターを伴う化合物1のラットへのPO投与後のヒドロモルフォン(HM)の経時的な平均血液濃度を比較したグラフである。
【図2】図2は、化合物1単独およびオボアルブミン(OVA)を伴う化合物1、ならびにオボアルブミンおよびSBTIを伴う化合物1のラットへのPO投与後のヒドロモルフォン(HM)の経時的な平均血漿濃度を比較したグラフである。
【図3】図3は、化合物1単独およびBowman−Birkトリプシン−キモトリプシンインヒビター(BBSI)を伴う化合物1のラットへのPO投与後のヒドロモルフォン(HM)の経時的な個々の血液濃度を比較したグラフである。
【図4】図4は、化合物2単独およびSBTIを伴う化合物2のラットへのPO投与後のヒドロモルフォン(HM)放出の経時的な平均血漿濃度を比較したグラフである。
【図5】図5は、化合物3単独およびSBTIを伴う化合物3のラットへのPO投与後のヒドロモルフォン(HM)放出の経時的な平均血漿濃度を比較したグラフである。
【図6】図6は、化合物4単独およびSBTIを伴う化合物4のラットへのPO投与後のヒドロモルフォン(HM)放出の経時的な平均血漿濃度を比較したグラフである。
【図7A】図7Aおよび7Bは、任意のトリプシンインヒビターの非存在下またはSBTI、化合物107、化合物108、もしくは化合物109の存在下における化合物4とトリプシンとの所定の組み合わせの暴露の結果を示すグラフである。これらの条件下で経時的に、図7Aは、化合物4の消失を示す。
【図7B】図7Aおよび7Bは、任意のトリプシンインヒビターの非存在下またはSBTI、化合物107、化合物108、もしくは化合物109の存在下における化合物4とトリプシンとの所定の組み合わせの暴露の結果を示すグラフである。これらの条件下で経時的に、図7Bは、ヒドロモルフォンの出現を示す。
【図8】図8は、化合物3単独および化合物101を伴う化合物3のラットへのPO投与後のヒドロモルフォン(HM)放出の経時的な平均血漿濃度を比較したグラフである。
【図9】図9は、化合物4単独および化合物101を伴う化合物4のラットへのPO投与後のヒドロモルフォン(HM)放出の経時的な平均血漿濃度を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
他で示さない限り、以下の用語は以下の意味を有する。任意の定義されていない用語は、それらの認識された意味を有する。
【0014】
本明細書において使用する用語「アルキル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、親のアルカンの単一の炭素原子から1個の水素原子を取り出すことによって誘導される飽和の分岐鎖または直鎖の一価炭化水素ラジカルを指す。典型的なアルキル基として、メチル;エチル、プロパン−1−イルまたはプロパン−2−イルのようなプロピル類;およびブタン−1−イル、ブタン−2−イル、2−メチル−プロパン−1−イルまたは2−メチル−プロパン−2−イルのようなブチル類が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1〜20個の炭素原子を含んでなる。他の実施形態では、アルキル基は、1〜10個の炭素原子を含んでなる。なお他の実施形態では、アルキル基は、1〜6個の炭素原子、例えば、1〜4個の炭素原子を含んでなる。
【0015】
「アルケニル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、親のアルケンの単一の炭素原子から1個の水素原子を取り出すことによって誘導される少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する不飽和の分岐鎖、直鎖または環式のアルキルラジカルを指す。基は、二重結合についてシス配座またはトランス配座のいずれで存在してもよい。典型的なアルケニル基として、エテニル;プロパ−1−エン−1−イル、プロパ−1−エン−2−イル、プロパ−2−エン−1−イル(アリル)、プロパ−2−エン−2−イル、シクロプロパ−1−エン−1−イルのようなプロペニル類;シクロプロパ−2−エン−1−イル;ブタ−1−エン−1−イル、ブタ−1−エン−2−イル、2−メチル−プロパ−1−エン−1−イル、ブタ−2−エン−1−イル、ブタ−2−エン−1−イル、ブタ−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブタ−1−エン−1−イル、シクロブタ−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イルのようなブテニル類など;およびその他が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
「アルキニル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、親のアルキンの単一の炭素原子から1個の水素原子を取り出すことによって誘導される少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する不飽和の分岐鎖、直鎖または環式のアルキルラジカルを指す。典型的なアルキニル基として、エチニル;プロパ−1−イン−1−イル、プロパ−2−イン−1−イルなどのようなプロピニル類;ブタ−1−イン−1−イル、ブタ−1−イン−3−イル、ブタ−3−イン−1−イルなどのようなブチニルなど;およびその他が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
「アシル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、ラジカル−C(O)R30を指し、ここで、R30は、本明細書において定義するように、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルである。代表的な例として、ホルミル、アセチル、シクロヘキシルカルボニル、シクロヘキシルメチルカルボニル、ベンゾイル、ベンジルカルボニル、ピペロニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。置換アシルは、アシルの置換バージョンを指し、そして例えば、スクシニルおよびマロニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
用語「アミノアシル」および「アミド」は、基−C(O)NR2122を指し、ここで、R21およびR22は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロ環、および置換ヘテロ環からなる群から選択され、そしてここで、R21およびR22は、場合により、それに対する窒素結合と共に接続されて、ヘテロ環または置換ヘテロ環基を形成し、そしてここで、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロ環、および置換ヘテロ環は、本明細書において定義されるとおりである。
【0019】
「アルコキシ」は、それ自体、または別の置換基の一部として、ラジカル−OR31を指し、ここで、R31は、本明細書において定義するアルキルまたはシクロアルキル基を表す。代表的な例として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、シクロヘキシルオキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
「アルコキシカルボニル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、ラジカル−C(O)OR31を指し、ここで、R31は、本明細書において定義するアルキルまたはシクロアルキル基を表す。代表的な例として、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
「アリール」は、それ自体、または別の置換基の一部として、親の芳香環系の単一の炭素原子から1個の水素原子を取り出すことによって誘導される一価の芳香族炭化水素ラジカルを指す。典型的なアリール基として、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン(hexalene)、as−インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ−2,4−ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、アリール基は、6〜20個の炭素原子を含んでなる。他の実施形態では、アリール基は、6〜12個の炭素原子を含んでなる。アリール基の例には、フェニルおよびナフチルがある。
【0022】
「アリールアルキル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、炭素原子、典型的に、末端またはsp炭素原子に結合した水素原子のうちの1つが、アリール基によって置き換えられる非環式アルキルラジカルを指す。典型的なアリールアルキル基として、ベンジル、2−フェニルエタ−1−イル、ナフチルメチル、2−ナフチルエタ−1−イル、ナフトベンジル、2−ナフトフェニルエタ−1−イルなどが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、アリールアルキル基は(C−C30)アリールアルキルであり、例えば、アリールアルキル基のアルキル部分は(C−C10)であり、そしてアリール部分は(C−C20)である。他の実施形態では、アリールアルキル基は(C−C20)アリールアルキルであり、例えば、アリールアルキル基のアルキル部分は(C−C)であり、そしてアリール部分は(C−C12)である。
【0023】
化合物は、それらの化学的構造および/または化学的名称のいずれかで同定され得る。本明細書に記載の化合物は、1つ以上のキラル中心および/または二重結合を含有してもよく、従って、二重結合異性体(即ち、幾何異性体)、エナンチオマーまたはジアステレオマーのような立体異性体として存在してもよい。従って、立体異性的に純粋な形態(例えば、幾何学的に純粋、エナンチオマー的に純粋またはジアステレオマー的に純粋)を含む化合物のすべての可能なエナンチオマーおよび立体異性体ならびにエナンチオマーおよび立体異性混合物は、本明細書における化合物の説明に含まれる。エナンチオマーおよび立体異性混合物は、当業者に周知の分離技術またはキラル合成技術を使用して、それらの成分のエナンチオマーまたは立体異性体に分割することができる。化合物はまた、エノール型、ケト型およびそれらの混合物を含むいくらかの互変異性型で存在してもよい。従って、本明細書において示す化学的構造は、例示した化合物のすべての可能な互変異性体型を包含する。記載の化合物はまた、同位体標識化合物を含み、ここで、1個以上の原子は、天然において従来見出される原子質量とは異なる原子質量を有する。本明細書において開示する化合物に組み入れられ得る同位元素の例として、H、H、11C、13C、14C、15N、18O、17Oなどが挙げられるが、これらに限定されない。化合物は、非溶媒和形態、ならびに水和形態を含む溶媒和形態で存在してもよい。所定の化合物は、複数の結晶性または無定形形態で存在してもよい。一般に、すべての物理形態は、本明細書において考慮される使用に等価であり、そして本開示物の範囲内にあることが意図される。
【0024】
「シクロアルキル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、飽和環式アルキルラジカルを指す。典型的なシクロアルキル基として、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、シクロアルキル基は、(C−C10)シクロアルキルである。他の実施形態では、シクロアルキル基は、(C−C)シクロアルキルである。
【0025】
「ヘテロシクロアルキル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、1個以上の炭素原子(および任意の会合した水素原子)が、独立して、同じまたは異なるヘテロ原子で置き換えられる飽和環式アルキルラジカルを指す。炭素原子を置き換えるための典型的なヘテロ原子として、N、P、O、S、Siなどが挙げられるが、これらに限定されない。典型的なシクロヘテロアルキル基として、エポキシド類、アジリン類、チイラン類、イミダゾリジン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ピラゾリジン、ピロリジン、キヌクリジンなどから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
「ヘテロアルキル、ヘテロアルケニルおよびヘテロアルキニル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、それぞれ、1個以上の炭素原子(および任意の会合した水素原子)が、独立して、同じまたは異なるヘテロ芳香族基で置き換えられるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基を指す。これらの基に含まれ得る典型的なヘテロ原子基として、−O−、−S−、−O−O−、−S−S−、−O−S−、−NR3738−、=N−N=、−N=N−、−N=N−NR3940、−PR41−、−P(O)−、−POR42−、−O−P(O)−、−SO−、−SO−、−SnR4344−などが挙げられるが、これらに限定されず、ここで、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43およびR44は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルまたは置換ヘテロアリールアルキルである。
【0027】
「ヘテロアリール」は、それ自体、または別の置換基の一部として、親のヘテロ芳香環系の単一の原子から1個の水素原子を取り出すことによって誘導される一価のヘテロ芳香族ラジカルを指す。典型的なヘテロアリール基として、アクリジン、アルシンドール、カルバゾール、β−カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は、5〜20員環ヘテロアリールである。他の実施形態では、ヘテロアリール基は、5〜10員環ヘテロアリールである。なお他の実施形態では、ヘテロアリール基は、チオフェン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ピリジン、キノリン、イミダゾール、オキサゾールおよびピラジンから誘導されるものである。
【0028】
「ヘテロアリールアルキル」は、それ自体、または別の置換基の一部として、炭素原子、典型的に、末端またはsp炭素原子に結合した水素原子のうちの1つが、ヘテロアリール基によって置き換えられる非環式アルキルラジカルを指す。いくつかの実施形態では、ヘテロアリールアルキル基は、6〜30員環ヘテロアリールアルキルであり、例えば、ヘテロアリールアルキルのアルキル部分は、1〜10員環であり、そしてヘテロアリール部分は、5〜20員環ヘテロアリールである。他の実施形態では、ヘテロアリールアルキル基は、6〜20員環ヘテロアリールアルキルであり、例えば、ヘテロアリールアルキルのアルキル部分は、1〜8員環であり、そしてヘテロアリール部分は、5〜12員環ヘテロアリールである。
【0029】
「オピオイド」は、オピオイド受容体における相互作用によって、その薬理学的作用を及ぼす化学物質を指す。「フェノール性オピオイド」は、フェノール基を含有するオピオイドのサブセットを指す。フェノール性オピオイドの例を以下に提供する。
【0030】
「親の芳香環系」は、それ自体、または別の置換基の一部として、共役π電子系を有する非飽和の環式または多環式環系を指す。具体的には、環のうちの1つ以上が芳香族性であり、そして環のうちの1つ以上が、例えば、フルオレン、インダン、インデン、フェナレンなどのような飽和または不飽和である縮合環系が、「親の芳香環系」の定義内に含まれる。典型的な親の芳香環系として、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン(hexalene)、as−インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ−2,4−ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
「親のヘテロ芳香環系」は、それ自体、または別の置換基の一部として、1個以上の炭素原子(および任意の会合した水素原子)が、独立して、同じまたは異なるヘテロ原子で置き換えられる親の芳香環系を指す。炭素原子を置き換えるための典型的なヘテロ原子として、N、P、O、S、Siなどが挙げられるが、これらに限定されない。具体的には、環のうちの1つ以上が芳香族性であり、そして環のうちの1つ以上が、例えば、アルシンドール、ベンゾジオキサン、ベンゾフラン、クロマン、クロメン、インドール、インドリン、キサンテンなどのような飽和または不飽和である縮合環系が、「親のヘテロ芳香環系」の定義内に含まれる。典型的な親のヘテロ芳香環系として、アルシンドール、カルバゾール、β−カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
「医薬組成物」は、少なくとも1つの化合物およびそれと共に化合物が患者に投与される薬学的に許容できるビヒクルを指す。
【0033】
「薬学的に許容できる塩」は、親化合物の所望される薬理学的活性を所有する化合物の塩を指す。そのような塩として:(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などのような無機酸によって形成されるか;または酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクタ−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルクロン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などのような有機酸によって形成される酸付加塩;あるいは(2)親化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオンによって置き換えられるか;またはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルグルカミンなどのような有機塩基と配位結合する場合に形成される塩が挙げられる。
【0034】
本明細書において使用する用語「溶媒和物」は、溶質、即ち、本実施形態の化合物もしくはその薬学的に許容できる塩の1つ以上の分子および溶媒の1つ以上の分子によって形成される複合体または凝集体を指す。そのような溶媒和は、典型的に、実質的に一定のモル比の溶質および溶媒を有する結晶固体である。代表的な溶媒として、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸などが挙げられる。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物である。
【0035】
「薬学的に許容できるビヒクル」は、化合物と共に、もしくは化合物中にあって投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤またはキャリアを指す。
【0036】
「患者」として、ヒト、ならびにまた、家畜、動物園の動物およびネコ、イヌまたはウマのようなペット(伴侶)動物のような他の哺乳動物が挙げられる。
【0037】
「防止する」または「防止」または「予防」は、疼痛のような病態の発生の危険性を低減することを指す。
【0038】
「プロドラッグ」は、活性薬剤を放出するために身体内での転換を必要とする活性薬剤の誘導体を指す。プロドラッグは、しばしば、必ずしもそうではないが、活性薬剤に変換されるまで、薬理学的に不活性である。
【0039】
「プロモイエティ」は、活性薬剤内の官能基を遮蔽するために使用する場合、活性薬剤をプロドラッグに変換する保護基の形態を指す。典型的に、プロモイエティは、インビボでの酵素的または非酵素的手段によって切断される結合を介して、薬物に付着される。
【0040】
「保護基」は、分子遮蔽中の反応性官能基に付着する場合、官能基の反応性を低減または防止する原子の一群を指す。保護基の例は、Green et al.,“Protective Groups in Organic Chemistry,”(Wiley,2nd ed.1991)およびHarrison et al.,“Compendium of Synthetic Organic Methods,”Vols.1−8(John Wiley and Sons,1971−1996)において見出すことができる。代表的なアミノ保護基として、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(「CBZ」)、tert−ブトキシカルボニル(「Boc」)、トリメチルシリル(「TMS」)、2−トリメチルシリル−エタンスルホニル(「SES」)、トリチルおよび置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(「FMOC」)、ニトロ−ベラトリルオキシカルボニル(「NVOC」)などが挙げられるが、これらに限定されない。代表的なヒドロキシ保護基として、ベンジル、およびトリチルエーテルならびにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテルおよびアリルエーテルのようなヒドロキシ基がアシル化されるかまたはアルキル化されるかのいずれかであるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
「置換された」は、1個以上の水素原子が、独立して、同じまたは異なる置換基で置き換えられる基を指す。典型的な置換基として、アルキレンジオキシ(例えば、メチレンジオキシ)、−M、−R60、−O、=O、−OR60、−SR60、−S、=S、−NR6061、=NR60、−CF、−CN、−OCN、−SCN、−NO、−NO、=N、−N、−S(O)、−S(O)OH、−S(O)60、−OS(O)、−OS(O)60、−P(O)(O、−P(O)(OR60)(O)、−OP(O)(OR60)(OR61)、−C(O)R60、−C(S)R60、−C(O)OR60、−C(O)NR6061、−C(O)O、−C(S)OR60、−NR62C(O)NR6061、−NR62C(S)NR6061、−NR62C(NR63)NR6061および−C(NR62)NR6061が挙げられるが、これらに限定されず、ここで、Mはハロゲンであり;R60、R61、R62およびR63は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールもしくは置換ヘテロアリールであるか、または場合により、R60およびR61は、それらが結合する窒素原子と共に、ヘテロシクロアルキルもしくは置換ヘテロシクロアルキル環を形成する。
【0042】
疼痛のような任意の病態を「治療する」または「治療」は、所定の実施形態において、病態を改善すること(即ち、病態の発達を阻止または低減すること)を指す。所定の実施形態では、「治療する」または「治療」は、患者によって認識され得ない少なくとも1つの物理パラメータを改善することを指す。所定の実施形態では、「治療する」または「治療」は、物理的に(例えば、認識可能な徴候の安定化)、生理学的(例えば、物理パラメータの安定化)、またはその両方のいずれかで病態を阻害することを指す。所定の実施形態では、「治療する」または「治療」は、病態の発生を遅延させることを指す。
【0043】
「治療有効量」は、疼痛のような病態を防止または治療するために患者に投与する場合の化合物の量が、そのような治療を生じさせるのに十分であることを意味する。「治療有効量」は、化合物、患者の病態およびその重症度ならびに年齢、重量などに依存して、変動する。
【0044】
詳細な説明
本発明についてさらに詳細に説明する前に、本発明は、記載された特定の実施形態に限定されるものではなく、当然のことながら多様であり得ることは理解されたい。また、本明細書において使用する用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とするものであって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、特定の実施形態に限定されることを意図していないことも理解されたい。
【0045】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される単数形「a」、「an」および「the」は、別段文脈が明示しない限り、複数の指示対象も含むことが留意されなければならない。特許請求の範囲は、任意の随意的要素を除外するために起案され得ることもさらに留意される。従って、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙と関連して、「単に」、「唯一の」などのような排他的用語を使用するため、または「消極的な」限定を使用するための前提として働くように意図される。
【0046】
本明細書において使用する用語「a」実体または「an」実体は、その実体の1つ以上を指すことを理解すべきである。例えば、化合物(a compound)は、1つ以上(one or more)の化合物を指す。従って、用語「a」、「an」、「1つ以上(one or more)」および「少なくとも1つ(at least one)」は、同義的に使用することができる。同様に、用語「含んでなる」、「含む」および「有する」も、同義的に使用することができる。
【0047】
本明細書において考察する刊行物は、本出願の出願日前に開示されたもののみ提供している。本明細書には、先行本発明に基づいて、本発明がそのような刊行物に先行する権利を有さないものと承認するように解釈されるものは含まれていない。さらに、提供した公開日は、実際の公開日とは異なることもあるため、独立して確認する必要があり得る。
【0048】
別段定義しない限り、本明細書において使用するすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する当該技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または等価なあらゆる方法および材料は、本発明の実践または試験にも使用することができるが、ここで、好適な方法および材料について説明する。本明細書において言及するすべての刊行物は、引用する刊行物に関連する方法および/または材料を開示および説明するために、本明細書において参考として援用される。
【0049】
別段留意する場合を除いて、本実施形態の方法および教示内容は、一般的に、当該技術分野において周知の従来の方法に従って、ならびに本明細書を通して引用および考察した様々な一般的および特定の参考文献において記載のとおりに、実施される。例えば、Loudon,Organic Chemistry,Fourth Edition,New York:Oxford University Press,2002,pp.360−361,1084−1085;Smith and March,March’s Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure,Fifth Edition,Wiley−Interscience,2001を参照のこと。
【0050】
主題化合物を命名するために本明細書において使用する命名法を、本明細書の実施例に例示する。可能である場合、この命名法は、一般的に、市販のAutoNomソフトウェア(MDL,San Leandro,Calif.)を使用して誘導した。
【0051】
今回、フェノール性オピオイドの減弱された放出は、国際公開第2007/140272号パンフレットに記載の特定のプロドラッグと組み合わせたダイズ由来のトリプシンインヒビターを投与することによって達成することができることを見出した。
【0052】
代表的実施形態
本開示物は、医薬組成物およびそれらの使用方法を提供し、ここで、医薬組成物は、フェノール性オピオイドの酵素制御放出を提供するフェノール性オピオイドプロドラッグ、およびプロドラッグの酵素切断を減弱するように、プロドラッグからのフェノール性オピオイドの酵素制御放出を仲介する酵素と相互作用する酵素インヒビターを含んでなる。本開示物は、トリプシンインヒビター、および切断される場合、フェノール性オピオイドの放出を容易にするトリプシン−不安定部分を含有するフェノール性オピオイドプロドラッグを含んでなる医薬組成物を提供する。フェノール性オピオイドプロドラッグおよびトリプシンインヒビターの例を以下に記載する。
【0053】
フェノール性オピオイドプロドラッグ
所定の実施形態に従えば、フェノール性オピオイドの酵素制御放出を提供するフェノール性オピオイドプロドラッグが提供される。フェノール性オピオイドプロドラッグは、フェノール性水素原子が、酵素切断部分で保護される窒素求核種を所有するスペーサー脱離基で置換されている対応する化合物であり、スペーサー脱離基および窒素求核種の配置は、切断部分の酵素切断時に、フェノール性オピオイドを提供するように、スペーサー脱離基から化合物を遊離させて、窒素求核種が環式尿素を形成することが可能であるように配置される。
【0054】
酵素切断部分を切断することが可能な酵素は、ペプチダーゼであってもよい−酵素切断部分は、アミド(例えば、ペプチド:−NHCO−)結合を介して、求核性窒素に連結されている。いくつかの実施形態では、酵素は、タンパク質の消化酵素である。
【0055】
式I〜VI
本明細書において示すように、式Iは、式IIの化合物を説明し、式中、Rは、(1−4C)アルキル基であり;RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または(1−4C)アルキル基を表し;かつRは、水素原子、N−アシル基(N−置換アシルを含む)、アミノ酸の残基、ジペプチド、アミノ酸またはジペプチドのN−アシル誘導体(N−置換アシル誘導体を含む)を表す。
【0056】
式IIIは、式IIの化合物を説明し、式中、Rは、(1−4C)アルキル基であり;RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または(1−4C)アルキル基を表し;かつRは、水素原子、N−アシル基(N−置換アシルを含む)、アミノ酸の残基、ジペプチド、アミノ酸またはジペプチドのN−アシル誘導体(N−置換アシル誘導体を含む)を表す。
【0057】
式IVは、式Iの化合物を説明し、ここで、「X」は、所定のフェノール性オピオイドで構造的に置き換えられる。
【0058】
また、本明細書において示すように、式IVは、式Vの化合物を説明し、式中、Rは、(1−4C)アルキル基であり;RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または(1−4C)アルキル基を表し;かつRは、水素原子、N−アシル基(N−置換アシルを含む)、アミノ酸の残基、ジペプチド、アミノ酸またはジペプチドのN−アシル誘導体(N−置換アシル誘導体を含む)を表す。
【0059】
式VIは、式Vの化合物を説明し、式中、Rは、(1−4C)アルキル基であり;RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または(1−4C)アルキル基を表し;かつRは、水素原子、N−アシル基(N−置換アシルを含む)、アミノ酸の残基、ジペプチド、アミノ酸またはジペプチドのN−アシル誘導体(N−置換アシル誘導体を含む)を表す。
【0060】
式I〜IIIでは、Xは、フェノール性オピオイドの残基を表し、ここで、フェノール性水酸基の水素原子は、−C(O)−NR−(C(R)(R))−NH−C(O)−CH(R)−NH(R)に対する共有結合によって置き換えられる。
【0061】
上記で開示したように、「オピオイド」は、オピオイド受容体における相互作用によって、その薬理学的作用を及ぼす化学物質を指す。「フェノール性オピオイド」は、フェノール基を含有するオピオイドのサブセットを指す。例えば、フェノール性オピオイドとして、ブプレノルフィン、ジヒドロエトルフィン、ジプレノルフィン、エトルフィン、ヒドロモルフォン、レボルファノール、モルヒネ(およびその代謝物)、ナルメフェン、ナロキソン、N−メチルナロキソン、ナルトレキソン、N−メチルナルトレキソン、オキシモルフォン、オリパビン(oripavin)、ケトベミドン、デゾシン、ペンタゾシン、フェナゾシン、ブトルファノール、ナルブフィン、メプタジノール、O−デスメチルトラマドール、タペンタド(tapentado)、ナロルフィンが挙げられるが、これらに限定されない。上記のフェノール性オピオイドの構造を、以下に示す:
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
【表4】

【0066】
【表5】

【0067】
所定の実施形態では、フェノール性オピオイドは、オキシモルフォン、ヒドロモルフォン、またはモルヒネである。
【0068】
式I〜VIを、これから以下により詳細に説明する。
【0069】
式I
式(I)の化合物は、求核性窒素原子がL−アルギニンまたはL−リジンの残基に結合している国際公開第2007/140272号パンフレットにおいて開示された化合物に対応する。
【0070】
Xにおいて提供されるフェノール性オピオイドに見合う例は、オキシモルフォン、ヒドロモルフォンおよびモルヒネである。
【0071】
に見合う例は、メチルおよびエチル基である。
【0072】
およびRのそれぞれに見合う例は、水素原子である。
【0073】
nに見合う例は、2である。
【0074】
一実施形態では、Rは、−CHCHCHNH(C=NH)NHを表す。
【0075】
アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸であり得る。天然に存在するアミノ酸は、通常、L型を有することが理解されよう。
【0076】
について述べると、特に見合う例は、以下の通りである:
N−アシル基については:アセチルのようなN−(1−4C)アルカノイル基、N−ベンゾイルのようなN−アロイル基、またはN−ピペロニル基;
アミノ酸については:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、またはバリンが;および
ジペプチドについては:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンから独立して選択される任意の2つのアミノ酸の組み合わせ。
【0077】
について特に見合う例は、以下の通りである:
水素原子;
N−アシル基については:アセチルのようなN−(1−4C)アルカノイル基、N−ベンゾイルのようなN−アロイル基、またはN−ピペロニル基;および
アミノ酸の残基、ジペプチド、またはアミノ酸もしくはジペプチドのN−アシル誘導体については:グリシニルまたはN−アセチルグリシニル。
【0078】
一実施形態では、Rは、N−アセチル、グリシニルまたはN−アセチルグリシニル、例えば、N−アセチルを表す。
【0079】
−C(O)−CH(R)−NH(R)によって表される基の例は、N−アセチルアルギニルである。
【0080】
特定の実施形態では、式(I)の化合物は、ヒドロモルフォン3−(N−メチル−N−(2−N’−アセチルアルギニルアミノ))エチルカルバメート、またはその薬学的に許容できる塩である。この化合物については、国際公開第2007/140272号パンフレットの実施例3に記載されている。
【0081】
式II
本実施形態は、一般式(II):
X−C(O)−NR−(C(R)(R))−NH−C(O)−CH(R)−NH(R
(II)
の化合物またはその薬学的に許容できる塩を提供し、式中:
Xは、フェノール性オピオイドの残基を表し、ここで、フェノール性水酸基の水素原子は、−C(O)−NR−(C(R)(R))−NH−C(O)−CH(R)−NH(R)に対する共有結合によって置き換えられ;
は、アルキル、置換アルキル、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールおよび置換アリールから選択され;
各Rが、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アシル、およびアミノアシルから独立して選択され;
各Rが、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アシル、およびアミノアシルから独立して選択されるか;
あるいはRおよびRは、それらが付着する炭素と共に、シクロアルキルおよび置換シクロアルキル基を形成するか、あるいは隣接する炭素原子上の2つのRまたはR基は、それらが付着する炭素原子と共に、シクロアルキルまたは置換シクロアルキル基を形成し;
nは2〜4の整数を表し;
は、−CHCHCHNH(C=NH)NHまたは−CHCHCHCHNHを表し、Rが付着する炭素原子の配置は、L−アミノ酸における配置に対応し;かつ
は、水素原子、N−アシル基(N−置換アシル誘導体を含む)、アミノ酸の残基、ジペプチド、アミノ酸もしくはジペプチドのN−アシル誘導体(N−置換アシル誘導体を含む)を表す。
【0082】
式IIでは、Xにおいて提供されるフェノール性オピオイドに見合う例は、オキシモルフォン、ヒドロモルフォンおよびモルヒネである。
【0083】
式IIでは、Rは、アルキル、置換アルキル、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールおよび置換アリールから選択され得る。ある場合において、Rは(1−6C)アルキルである。他の場合において、Rは(1−4C)アルキルである。他の場合において、Rはメチルまたはエチルである。他の場合において、Rはメチルである。場合によっては、Rはエチルである。
【0084】
ある場合において、Rは置換アルキルである。ある場合において、Rは、カルボキシルまたはカルボキシルエステルで置換されたアルキル基である。ある場合において、Rは、−(CH−COOH、−(CH−COOCH、または−(CH−COOCHCHである。
【0085】
ある場合において、式IIでは、Rは、アリールアルキルまたは置換アリールアルキルである。ある場合において、式IIでは、Rは、アリールアルキルである。ある場合において、Rは置換アリールアルキルである。ある場合において、Rは、カルボキシルまたはカルボキシルエステルで置換されたアリールアルキル基である。ある場合において、Rは、−(CH(C)−COOH、−(CH(C)−COOCH、または−(CH(C)−COOCHCHであって、ここで、qは1〜10の整数である。ある場合において、Rは、−CH(CH4)−COOH、−CH(C)−COOCH、または−CH(C)−COOCHCHである。
【0086】
ある場合において、式IIでは、Rは、アリールである。ある場合において、Rは置換アリールである。ある場合において、Rは、カルボキシルまたはカルボキシルエステルで置換されたアリール基である。ある場合において、Rは、−(C)−COOH、−(C)−COOCH、または−(C)−COOCHCHである。
【0087】
式IIでは、各Rは、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アシル、およびアミノアシルから独立して選択され得る。ある場合において、Rは水素またはアルキルである。ある場合において、Rは水素である。ある場合において、Rはアルキルである。ある場合において、Rはアシルである。ある場合において、Rはアミノアシルである。
【0088】
式IIでは、各Rは、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アシル、およびアミノアシルから独立して選択され得る。ある場合において、Rは水素またはアルキルである。ある場合において、Rは水素である。ある場合において、Rはアルキルである。ある場合において、Rはアシルである。ある場合において、Rはアミノアシルである。
【0089】
ある場合において、RおよびRは水素である。ある場合において、同じ炭素上のRおよびRは、両方ともアルキルである。ある場合において、同じ炭素上のRおよびRは、メチルである。ある場合において、同じ炭素上のRおよびRは、エチルである。
【0090】
式IIでは、RおよびRは、それらが付着する炭素と共に、シクロアルキルおよび置換シクロアルキル基を形成するか、あるいは隣接する炭素原子上の2つのRまたはR基は、それらが付着する炭素原子と共に、シクロアルキルまたは置換シクロアルキル基を形成することができる。ある場合において、RおよびRは、それらが付着する炭素と共に、シクロアルキル基を形成することができる。それ故、ある場合において、同じ炭素上のRおよびRは、スピロ環を形成する。ある場合において、RおよびRは、それらが付着する炭素と共に、置換シクロアルキル基を形成することができる。ある場合において、隣接する炭素原子上の2つのRまたはR基は、それらが付着する炭素原子と共に、シクロアルキル基を形成することができる。ある場合において、隣接する炭素原子上の2つのRまたはR基は、それらが付着する炭素原子と共に、置換シクロアルキル基を形成することができる。
【0091】
ある場合において、RおよびRのうち一方はアミノアシルである。
【0092】
ある場合において、RおよびRのうち一方は、フェニレンジアミンを含んでなるアミノアシルである。ある場合において、RおよびRのうち一方は、
【化4】

であって;ここで、各R10は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、およびアシルから選択され、そしてR11は、アルキルまたは置換アルキルである。ある場合において、R10のうち少なくとも1つは、アシルである。ある場合において、R10のうち少なくとも1つは、アルキルまたは置換アルキルである。ある場合において、R10のうち少なくとも1つは、水素である。ある場合において、R10のうち両方が水素である。
【0093】
ある場合において、RおよびRのうち一方は
【化5】

であり;ここで、R10は、水素、アルキル、置換アルキル、またはアシルである。ある場合において、R10はアシルである。ある場合において、R10はアルキルまたは置換アルキルである。ある場合において、R10は水素である。
【0094】
ある場合において、RまたはRは、分子内環化の速度をモジュレートすることができる。RまたはRは、RおよびRが両方とも水素である対応する分子と比較して、分子内環化の速度を増加することができる。ある場合において、RまたはRは、電子吸引基または電子供与基を含んでなる。ある場合において、RまたはRは、電子吸引基を含んでなる。ある場合において、RまたはRは、電子供与基を含んでなる。
【0095】
電子吸引置換基を官能化することが可能な原子および基は、有機化学の分野において周知である。それらは、電気陰性原子および電気陰性原子を含有する基を含む。そのような基は、電子密度の誘導性吸引を介して、β位における求核性窒素の塩基度またはプロトン化状態を低下するように機能する。そのような基はまた、アルキレン鎖に沿った他の位置上に位置することができる。例として、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、アシル基(例えば、アルカノイル基、アロイル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基またはアミノカルボニル基(例えば、カルバモイル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニルもしくはアリールアミノカルボニル基))、オキソ(=O)置換基、ニトリル基、ニトロ基、エーテル基(例えば、アルコキシ基)およびオルト位、パラ位またはオルト位およびパラ位の両方において置換基を有するフェニル基(各置換基は、ハロゲン原子、フルオロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル)、ニトロ基、シアノ基およびカルボキシル基から独立して選択される)が挙げられる。電子吸引置換基のそれぞれは、独立して、これらから選択することができる。
【0096】
ある場合において、−[C(R)(R)]−は、−CH(CHF)CH(CHF)−;−CH(CHF)CH(CHF)−;−CH(CF)CH(CF)−;−CHCH(CF)−;−CHCH(CHF)−;−CHCH(CHF)−;−CHCH(F)CH−;−CHC(F2)CH−;−CHCH(C(O)NR2021)−;−CHCH(C(O)OR22)−;−CHCH(C(O)OH)−;−CH(CHF)CHCH(CHF)−;−CH(CHF)CHCH(CHF)−;−CH(CF)CHCH(CF)−;−CHCHCH(CF)−;−CHCHCH(CHF)−;−CHCHCH(CHF)−;−CHCHCH(C(O)NR2324)−;−CHCHCH(C(O)OR25)−;および−CHCHCH(C(O)OH)−から選択され、式中、R20、R21、R22およびR23は、それぞれ独立して、水素または(1−6C)アルキルを表し、そしてR24およびR25は、それぞれ独立して、(1−6C)アルキルを表す。
【0097】
式IIでは、nは2〜4の整数を表す。nに見合う例は、2である。nに見合う例は、3である。nに見合う例は、4である。
【0098】
式IIでは、一実施形態において、Rは、−CHCHCHNH(C=NH)NHを表す。もう1つの実施形態では、Rは、−CHCHCHCHNHを表す。
【0099】
アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸であり得る。天然に存在するアミノ酸は、通常、L型を有することが理解されよう。
【0100】
式IIでは、Rについて述べると、特に見合う例は、以下の通りである:
N−アシル基については:アセチルのようなN−(1−4C)アルカノイル基、N−ベンゾイルのようなN−アロイル基、またはN−ピペロニル基;
アミノ酸については:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、またはバリンが;および
ジペプチドについては:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンから独立して選択される任意の2つのアミノ酸の組み合わせ。
【0101】
式IIでは、Rについて特に見合う例は、以下の通りである:
水素原子;
N−アシル基については:アセチルのようなN−(1−4C)アルカノイル基、N−ベンゾイルのようなN−アロイル基、またはN−ピペロニル基;および
アミノ酸の残基、ジペプチド、またはアミノ酸もしくはジペプチドのN−アシル誘導体については:グリシニルまたはN−アセチルグリシニル。
【0102】
式IIでは、一実施形態において、Rは、N−アセチル、グリシニルまたはN−アセチルグリシニル、例えば、N−アセチルを表す。
【0103】
式IIでは、−C(O)−CH(R)−NH(R)によって表される基の例は、N−アセチルアルギニルまたはN−アセチルリジニルである。
【0104】
式IIでは、ある場合において、Rは、置換アシルを表す。ある場合において、Rは、マロニルまたはスクシニルであり得る。
【0105】
式IIでは、ある場合において、−C(O)−CH(R)−NH(R)によって表される基は、N−マロニルアルギニル、N−マロニルリジニル、N−スクシニルアルギニルおよびN−スクシニルリジニルである。
【0106】
式III
本実施形態は、一般式(III):
X−C(O)−NR−(C(R)(R))−NH−C(O)−CH(R)−NH(R
(III)
の化合物またはその薬学的に許容できる塩を提供し、式中:
Xは、フェノール性オピオイドの残基を表し、ここで、フェノール性水酸基の水素原子は、−C(O)−NR−(C(R)(R))−NH−C(O)−CH(R)−NH(R)に対する共有結合によって置き換えられ;
は、(1−4C)アルキル基を表し;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子または(1−4C)アルキル基を表し;
nは2または3を表し;
は、−CHCHCHNH(C=NH)NHまたは−CHCHCHCHNHを表し、Rが付着する炭素原子の配置は、L−アミノ酸における配置に対応し;かつ
は、水素原子、N−アシル基(N−置換アシル誘導体を含む)、アミノ酸の残基、ジペプチド、アミノ酸もしくはジペプチドのN−アシル誘導体(N−置換アシル誘導体を含む)を表す。
【0107】
式IIIでは、Xにおいて提供されるフェノール性オピオイドに見合う例は、オキシモルフォン、ヒドロモルフォンおよびモルヒネである。
【0108】
式IIIでは、Rに見合う例は、メチルおよびエチル基である。
【0109】
式IIIでは、RおよびRのそれぞれに見合う例は、水素原子である。
【0110】
式IIIでは、nに見合う例は、2である。
【0111】
式IIIでは、一実施形態において、Rは、−CHCHCHNH(C=NH)NHを表す。もう1つの実施形態では、Rは、−CHCHCHCHNHを表す。
【0112】
アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸であり得る。天然に存在するアミノ酸は、通常、L型を有することが理解されよう。
【0113】
式IIIでは、Rについて述べると、特に見合う例は、以下の通りである:
N−アシル基については:アセチルのようなN−(1−4C)アルカノイル基、N−ベンゾイルのようなN−アロイル基、またはN−ピペロニル基;
アミノ酸については:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、またはバリンが;および
ジペプチドについては:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンから独立して選択される任意の2つのアミノ酸の組み合わせ。
【0114】
式IIIでは、Rについて特に見合う例は、以下の通りである:
水素原子;
N−アシル基については:アセチルのようなN−(1−4C)アルカノイル基、N−ベンゾイルのようなN−アロイル基、またはN−ピペロニル基;および
アミノ酸の残基、ジペプチド、またはアミノ酸もしくはジペプチドのN−アシル誘導体については:グリシニルまたはN−アセチルグリシニル。
【0115】
式IIIでは、一実施形態において、Rは、N−アセチル、グリシニルまたはN−アセチルグリシニル、例えば、N−アセチルを表す。
【0116】
式IIIでは、−C(O)−CH(R)−NH(R)によって表される基の例は、N−アセチルアルギニルまたはN−アセチルリジニルである。
【0117】
式IIIでは、ある場合において、Rは、置換アシルを表す。ある場合において、Rは、マロニルまたはスクシニルであり得る。
【0118】
式IIIでは、ある場合において、−C(O)−CH(R)−NH(R)によって表される基は、N−マロニルアルギニル、N−マロニルリジニル、N−スクシニルアルギニルおよびN−スクシニルリジニルである。
【0119】
式IV
本実施形態は、一般式(IV):
【化6】

の化合物またはその薬学的に許容できる塩を提供し、式中:
は水素またはヒドロキシルであり;
はオキソ(=O)またはヒドロキシルであり;
点線は二重結合または単結合であり;
は、(1−4C)アルキル基を表し;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子または(1−4C)アルキル基を表し;
nは2または3を表し;
は、−CHCHCHNH(C=NH)NHまたは−CHCHCHCHNHを表し、Rが付着する炭素原子の配置は、L−アミノ酸における配置に対応し;かつ
は、水素原子、N−アシル基、またはアミノ酸の残基、ジペプチド、あるいはアミノ酸もしくはジペプチドのN−アシル誘導体を表す。
【0120】
式IVでは、Rの所定の例は、水素である。式IVでは、Rの所定の例は、ヒドロキシルである。
【0121】
式IVでは、Rの所定の例は、オキソ(=O)である。式IVでは、Rの所定の例は、ヒドロキシルである。
【0122】
式IVでは、点線の所定の例は、二重結合である。式IVでは、点線の所定の例は、単結合である。
【0123】
式IVでは、Rに見合う例は、メチルおよびエチル基である。
【0124】
式IVでは、RおよびRのそれぞれに見合う例は、水素原子である。
【0125】
式IVでは、nに見合う例は、2である。
【0126】
式IVでは、一実施形態において、Rは、−CHCHCHNH(C=NH)NHを表す。
【0127】
アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸であり得る。天然に存在するアミノ酸は、通常、L型を有することが理解されよう。
【0128】
式IVでは、Rについて述べると、特に見合う例は、以下の通りである:
N−アシル基については:アセチルのようなN−(1−4C)アルカノイル基、N−ベンゾイルのようなN−アロイル基、またはN−ピペロニル基;
アミノ酸については:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、またはバリンが;および
ジペプチドについては:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンから独立して選択される任意の2つのアミノ酸の組み合わせ。
【0129】
式IVでは、Rについて特に見合う例は、以下の通りである:
水素原子;
N−アシル基については:アセチルのようなN−(1−4C)アルカノイル基、N−ベンゾイルのようなN−アロイル基、またはN−ピペロニル基;および
アミノ酸の残基、ジペプチド、またはアミノ酸もしくはジペプチドのN−アシル誘導体については:グリシニルまたはN−アセチルグリシニル。
【0130】
式IVでは、一実施形態において、Rは、N−アセチル、グリシニルまたはN−アセチルグリシニル、例えば、N−アセチルを表す。
【0131】
式IVでは、−C(O)−CH(R)−NH(R)によって表される基の例は、N−アセチルアルギニルである。
【0132】
式V
本実施形態は、一般式(V):
【化7】

の化合物またはその薬学的に許容できる塩を提供し、式中:
は水素またはヒドロキシルであり;
はオキソ(=O)またはヒドロキシルであり;
点線は二重結合または単結合であり;
は、アルキル、置換アルキル、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールおよび置換アリールから選択され;
各Rが、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アシル、およびアミノアシルから独立して選択され;
各Rが、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アシル、およびアミノアシルから独立して選択されるか;
あるいはRおよびRは、それらが付着する炭素と共に、シクロアルキルおよび置換シクロアルキル基を形成するか、あるいは隣接する炭素原子上の2つのRまたはR基は、それらが付着する炭素原子と共に、シクロアルキルまたは置換シクロアルキル基を形成し;
nは2〜4の整数を表し;
は、−CHCHCHNH(C=NH)NHまたは−CHCHCHCHNHを表し、Rが付着する炭素原子の配置は、L−アミノ酸における配置に対応し;かつ
は、水素原子、N−アシル基(N−置換アシル誘導体を含む)、アミノ酸の残基、ジペプチド、アミノ酸もしくはジペプチドのN−アシル誘導体(N−置換アシル誘導体を含む)を表す。
【0133】
式Vでは、Rの所定の例は、水素である。式Vでは、Rの所定の例は、ヒドロキシルである。
【0134】
式Vでは、Rの所定の例は、オキソ(=O)である。式Vでは、Rの所定の例は、ヒドロキシルである。
【0135】
式Vでは、点線の所定の例は、二重結合である。式Vでは、点線の所定の例は、単結合である。
【0136】
式Vでは、Rは、アルキル、置換アルキル、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールおよび置換アリールから選択され得る。ある場合において、Rは(1−6C)アルキルである。他の場合において、Rは(1−4C)アルキルである。他の場合において、Rはメチルまたはエチルである。他の場合において、Rはメチルである。場合によっては、Rはエチルである。
【0137】
ある場合において、Rは置換アルキルである。ある場合において、Rは、カルボキシルまたはカルボキシルエステルで置換されたアルキル基である。ある場合において、Rは、−(CH)5−COOH、−(CH)5−COOCH、または−(CH)5−COOCHCHである。
【0138】
ある場合において、式Vでは、Rは、アリールアルキルまたは置換アリールアルキルである。ある場合において、式Vでは、Rは、アリールアルキルである。ある場合において、Rは置換アリールアルキルである。ある場合において、Rは、カルボキシルまたはカルボキシルエステルで置換されたアリールアルキル基である。ある場合において、Rは、−(CH)q(C)−COOH、−(CH)q(C)−COOCH、または−(CH)q(C)−COOCHCHであって、ここで、qは1〜10の整数である。ある場合において、Rは、−CH(C)−COOH、−CH(C)−COOCH、または−CH(C)−COOCHCHである。
【0139】
ある場合において、式Vでは、Rは、アリールである。ある場合において、Rは置換アリールである。ある場合において、Rは、カルボキシルまたはカルボキシルエステルで置換されたアリール基である。ある場合において、Rは、−(C)−COOH、−(C)−COOCH、または−(C)−COOCHCHである。
【0140】
式Vでは、各Rは、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アシル、およびアミノアシルから独立して選択され得る。ある場合において、Rは水素またはアルキルである。ある場合において、Rは水素である。ある場合において、Rはアルキルである。ある場合において、Rはアシルである。ある場合において、Rはアミノアシルである。
【0141】
式Vでは、各Rは、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アシル、およびアミノアシルから独立して選択され得る。ある場合において、Rは水素またはアルキルである。ある場合において、Rは水素である。ある場合において、Rはアルキルである。ある場合において、Rはアシルである。ある場合において、Rはアミノアシルである。
【0142】
ある場合において、RおよびRは水素である。ある場合において、同じ炭素上のRおよびRは、両方ともアルキルである。ある場合において、同じ炭素上のRおよびRは、メチルである。ある場合において、同じ炭素上のRおよびRは、エチルである。
【0143】
式Vでは、RおよびRは、それらが付着する炭素と共に、シクロアルキルおよび置換シクロアルキル基を形成するか、あるいは隣接する炭素原子上の2つのRまたはR基は、それらが付着する炭素原子と共に、シクロアルキルまたは置換シクロアルキル基を形成することができる。ある場合において、RおよびRは、それらが付着する炭素と共に、シクロアルキル基を形成することができる。それ故、ある場合において、同じ炭素上のRおよびRは、スピロ環を形成する。ある場合において、RおよびRは、それらが付着する炭素と共に、置換シクロアルキル基を形成することができる。ある場合において、隣接する炭素原子上の2つのRまたはR基は、それらが付着する炭素原子と共に、シクロアルキル基を形成することができる。ある場合において、隣接する炭素原子上の2つのRまたはR基は、それらが付着する炭素原子と共に、置換シクロアルキル基を形成することができる。
【0144】
ある場合において、RおよびRのうち一方はアミノアシルである。
【0145】
ある場合において、RおよびRのうち一方は、フェニレンジアミンを含んでなるアミノアシルである。ある場合において、RおよびRのうち一方は、
【化8】

であって;ここで、各R10は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、およびアシルから選択され、そしてR11は、アルキルまたは置換アルキルである。ある場合において、R10のうち少なくとも1つは、アシルである。ある場合において、R10のうち少なくとも1つは、アルキルまたは置換アルキルである。ある場合において、R10のうち少なくとも1つは、水素である。ある場合において、R10のうち両方が水素である。
【0146】
ある場合において、RおよびRのうち一方は
【化9】

であり;ここで、R10は、水素、アルキル、置換アルキル、またはアシルである。ある場合において、R10はアシルである。ある場合において、R10はアルキルまたは置換アルキルである。ある場合において、R10は水素である。
【0147】
ある場合において、RまたはRは、分子内環化の速度をモジュレートすることができる。RまたはRは、RおよびRが両方とも水素である対応する分子と比較して、分子内環化の速度を増加することができる。ある場合において、RまたはRは、電子吸引基または電子供与基を含んでなる。ある場合において、RまたはRは、電子吸引基を含んでなる。ある場合において、RまたはRは、電子供与基を含んでなる。
【0148】
電子吸引置換基を官能化することが可能な原子および基は、有機化学の分野において周知である。それらは、電気陰性原子および電気陰性原子を含有する基を含む。そのような基は、電子密度の誘導性吸引を介して、β位における求核性窒素の塩基度またはプロトン化状態を低下するように機能する。そのような基はまた、アルキレン鎖に沿った他の位置上に位置することができる。例として、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、アシル基(例えば、アルカノイル基、アロイル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基またはアミノカルボニル基(例えば、カルバモイル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニルもしくはアリールアミノカルボニル基))、オキソ(=O)置換基、ニトリル基、ニトロ基、エーテル基(例えば、アルコキシ基)およびオルト位、パラ位またはオルト位およびパラ位の両方において置換基を有するフェニル基(各置換基は、ハロゲン原子、フルオロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル)、ニトロ基、シアノ基およびカルボキシル基から独立して選択される)が挙げられる。電子吸引置換基のそれぞれは、独立して、これらから選択することができる。
【0149】
ある場合において、−[C(R)(R)]−は、−CH(CHF)CH(CHF)−;−CH(CHF)CH(CHF)−;−CH(CF)CH(CF)−;−CHCH(CF)−;−CHCH(CHF)−;−CHCH(CHF)−;−CHCH(F)CH−;−CHC(F)CH−;−CHCH(C(O)NR2021)−;−CHCH(C(O)OR22)−;−CHCH(C(O)OH)−;−CH(CHF)CHCH(CHF)−;−CH(CHF)CHCH(CHF)−;−CH(CF)CHCH(CF)−;−CHCHCH(CF)−;−CHCHCH(CHF)−;−CHCHCH(CHF)−;−CHCHCH(C(O)NR2324)−;−CHCHCH(C(O)OR25)−;および−CHCHCH(C(O)OH)−から選択され、式中、R20、R21、R22およびR23は、それぞれ独立して、水素または(1−6C)アルキルを表し、そしてR24およびR25は、それぞれ独立して、(1−6C)アルキルを表す。
【0150】
式Vでは、nは2〜4の整数を表す。nに見合う例は、2である。nに見合う例は、3である。nに見合う例は、4である。
【0151】
式Vでは、一実施形態において、Rは、−CHCHCHNH(C=NH)NHを表す。もう1つの実施形態では、Rは、−CHCHCHCHNHを表す。
【0152】
アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸であり得る。天然に存在するアミノ酸は、通常、L型を有することが理解されよう。
【0153】
式Vでは、Rについて述べると、特に見合う例は、以下の通りである:
N−アシル基については:アセチルのようなN−(1−4C)アルカノイル基、N−ベンゾイルのようなN−アロイル基、またはN−ピペロニル基;
アミノ酸については:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、またはバリンが;および
ジペプチドについては:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンから独立して選択される任意の2つのアミノ酸の組み合わせ。
【0154】
式Vでは、Rについて特に見合う例は、以下の通りである:
水素原子;
N−アシル基については:アセチルのようなN−(1−4C)アルカノイル基、N−ベンゾイルのようなN−アロイル基、またはN−ピペロニル基;および
アミノ酸の残基、ジペプチド、またはアミノ酸もしくはジペプチドのN−アシル誘導体については:グリシニルまたはN−アセチルグリシニル。
【0155】
式Vでは、一実施形態において、Rは、N−アセチル、グリシニルまたはN−アセチルグリシニル、例えば、N−アセチルを表す。
【0156】
式Vでは、−C(O)−CH(R)−NH(R)によって表される基の例は、N−アセチルアルギニルまたはN−アセチルリジニルである。
【0157】
式Vでは、ある場合において、Rは、置換アシルを表す。ある場合において、Rは、マロニルまたはスクシニルであり得る。
【0158】
式Vでは、ある場合において、−C(O)−CH(R)−NH(R)によって表される基は、N−マロニルアルギニル、N−マロニルリジニル、N−スクシニルアルギニルおよびN−スクシニルリジニルである。
【0159】
式VI
本実施形態は、一般式(VI):
【化10】

の化合物またはその薬学的に許容できる塩を提供し、式中:
は水素またはヒドロキシルであり;
はオキソ(=O)またはヒドロキシルであり;
点線は二重結合または単結合であり;
は、(1−4C)アルキル基を表し;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子または(1−4C)アルキル基を表し;
nは2または3を表し;
は、−CHCHCHNH(C=NH)NHまたは−CHCHCHCHNHを表し、Rが付着する炭素原子の配置は、L−アミノ酸における配置に対応し;かつ
は、水素原子、N−アシル基(N−置換アシル誘導体を含む)、アミノ酸の残基、ジペプチド、アミノ酸もしくはジペプチドのN−アシル誘導体(N−置換アシル誘導体を含む)を表す。
【0160】
式VIでは、Rの所定の例は、水素である。式VIでは、Rの所定の例は、ヒドロキシルである。
【0161】
式VIでは、Rの所定の例は、オキソ(=O)である。式VIでは、Rの所定の例は、ヒドロキシルである。
【0162】
式VIでは、点線の所定の例は、二重結合である。式VIでは、点線の所定の例は、単結合である。
【0163】
式VIでは、Rに見合う例は、メチルおよびエチル基である。
【0164】
式VIでは、RおよびRのそれぞれに見合う例は、水素原子である。
【0165】
式VIでは、nに見合う例は、2である。
【0166】
式VIでは、一実施形態において、Rは、−CHCHCHNH(C=NH)NHを表す。もう1つの実施形態では、Rは、−CHCHCHCHNHを表す。
【0167】
アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸であり得る。天然に存在するアミノ酸は、通常、L型を有することが理解されよう。
【0168】
式VIでは、Rについて述べると、特に見合う例は、以下の通りである:
N−アシル基については:アセチルのようなN−(1−4C)アルカノイル基、N−ベンゾイルのようなN−アロイル基、またはN−ピペロニル基;
アミノ酸については:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、またはバリンが;および
ジペプチドについては:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンから独立して選択される任意の2つのアミノ酸の組み合わせ。
【0169】
式VIでは、Rについて特に見合う例は、以下の通りである:
水素原子;
N−アシル基については:アセチルのようなN−(1−4C)アルカノイル基、N−ベンゾイルのようなN−アロイル基、またはN−ピペロニル基;および
アミノ酸の残基、ジペプチド、またはアミノ酸もしくはジペプチドのN−アシル誘導体については:グリシニルまたはN−アセチルグリシニル。
【0170】
式VIでは、一実施形態において、Rは、N−アセチル、グリシニルまたはN−アセチルグリシニル、例えば、N−アセチルを表す。
【0171】
式VIでは、−C(O)−CH(R)−NH(R)によって表される基の例は、N−アセチルアルギニルまたはN−アセチルリジニルである。
【0172】
式VIでは、ある場合において、Rは、置換アシルを表す。ある場合において、Rは、マロニルまたはスクシニルであり得る。
【0173】
式VIでは、ある場合において、−C(O)−CH(R)−NH(R)によって表される基は、N−マロニルアルギニル、N−マロニルリジニル、N−スクシニルアルギニルおよびN−スクシニルリジニルである。
【0174】
一般的合成実験手順
式Iの化合物は、国際公開第2007/140272号パンフレットに記載の特定のプロドラッグであり、そして式Iの化合物の合成について、本明細書において説明する。
【0175】
国際公開第2007/140272号パンフレットにおける合成スキームおよび手順はまた、式I〜VIの化合物を合成するのに使用することができる。本明細書に記載の化合物は、スキーム1に一般的に例示した経路を介して得ることができる。
【0176】
本明細書に記載のプロモイエティは、当業者に既知の手順によって、調製し、そしてフェノール類を含有する薬物に付着させることができる(例えば、Green et al.,“Protective Groups in Organic Chemistry,”(Wiley,2nd ed.1991);Harrison et al.,“Compendium of Synthetic Organic Methods,”Vols.1−8(John Wiley and Sons,1971−1996);“Beilstein Handbook of Organic Chemistry,”Beilstein Institute of Organic Chemistry,Frankfurt,Germany;Feiser et al.,“Reagents for Organic Synthesis,”Volumes 1−17,(Wiley Interscience);Trost et al.,“Comprehensive Organic Synthesis,”(Pergamon Press,1991);“Theilheimer’s Synthetic Methods of Organic Chemistry,” Volumes 1−45,(Karger,1991);March,“Advanced Organic Chemistry,”(Wiley Interscience),1991;Larock “Comprehensive Organic Transformations,”(VCH Publishers,1989);Paquette,“Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,”(John Wiley & Sons,1995),Bodanzsky,“Principles of Peptide Synthesis,”(Springer Verlag,1984);Bodanzsky,“Practice of Peptide Synthesis,”(Springer Verlag,1984)を参照のこと。さらに、出発物質は、商業的供給源からかまたは良好に確立された合成手順、上掲を介して、得ることができる。
【0177】
【化11】

ここで、スキーム1および上掲の式I(ここで、例示的目的のために、TはNHであり、YはNRであり、WはNHであり、pは1であり、R、R、およびRは先に定義したとおりであり、Xはフェノール性オピオイドであり、Pは保護基であり、そしてMは脱離基である)を参考にして、化合物1−1を、適切なカルボン酸またはカルボン酸等価物でアシル化して、化合物1−2を提供することができ、次いで、脱保護して、化合物1−3を得ることができる。次いで、化合物1−3を、活性型炭酸等価物1−4と反応させて、化合物1−5が提供される。
【0178】
式II〜VIの化合物について、−(C(R)(R))−は、YとTとの間の−(CH−CH)−部分に対応する。それ故、式II〜VIの化合物の合成では、化合物1−1は、−(C(R)(R))−に対する適切な実体を有して、式II〜VIの化合物の合成を生じる。
【0179】
トリプシンインヒビター
本明細書において使用する用語「トリプシンインヒビター」は、基質に対するトリプシンの作用を阻害することが可能な任意の因子を指す。トリプシンを阻害する因子の能力は、当該技術分野において周知のアッセイを使用して、測定することができる。例えば、典型的なアッセイでは、1単位は、1ベンゾイル−L−アルギニンエチルエステル単位(BAEE−U)だけトリプシン活性を低減するインヒビターの量に対応する。1BAEE−Uは、pH7.6および25℃において、253nmにおける吸光度を、1分間あたり0.001だけ増加する酵素の量である。例えば、K.Ozawa,M.Laskowski,1966,J.Biol.Chem.241,3955およびY.Birk,1976,Meth.Enzymol.45,700を参照のこと。
【0180】
当該技術分野において既知の多くのトリプシンインヒビターが存在し、トリプシンに特異的であるインヒビター、ならびにトリプシンおよびキモトリプシンのような他のプロテアーゼを阻害するインヒビターの両方がある。トリプシンインヒビターは、多様な動物または植物供給源から誘導することができる:例えば、ダイズ、トウモロコシ、ライマメおよび他の豆類、カボチャ、ヒマワリ、ウシならびに他の動物の膵臓および肺、ニワトリおよびシチメンチョウの卵白、ダイズベースの小児用処方物、ならびに哺乳動物の血液。トリプシンインヒビターはまた、微生物起源であり得:例えば、アンチパイン;例えば、H.Umezawa,1976,Meth.Enzymol.45,678を参照のこと。トリプシンインヒビターはまた、アルギニンもしくはリジンミミックまたは他の合成化合物であり得る:例えば、アリールグアニジン、ベンズアミジン、3,4−ジクロロイソクマリン、ジイソプロピルフルオロホスフェート、ガベキセート、メシレートまたはフェニルメタンスルホニルフルオリド。本明細書において使用するように、アルギニンまたはリジンミミックは、トリプシンのPポケットに結合する、および/またはトリプシン活性部位の機能を妨害することが可能な化合物である。
【0181】
一実施形態では、トリプシンインヒビターは、ダイズから誘導される。ダイズ(Glycine max)から誘導されるトリプシンインヒビターは、容易に入手可能であり、そしてヒトにおける消費に安全であると考えられる。それらには、トリプシンを阻害するSBTI、ならびにトリプシンおよびキモトリプシンを阻害するBowman−Birkインヒビターが含まれるが、これらに限定されない。そのようなトリプシンインヒビターは、例えば、Sigma−Aldrich,St.Louis,MO,USAから入手可能である。
【0182】
本実施形態に従う医薬組成物は、1つ以上の他のトリプシンインヒビターをさらに含んでなり得ることが理解されよう。
【0183】
小分子トリプシンインヒビター
上述のとおり、トリプシンインヒビターは、アルギニンもしくはリジンミミックまたは他の合成化合物であり得る。所定の実施形態では、トリプシンインヒビターは、アルギニンミミックまたはリジンミミックであり、ここで、アルギニンミミックまたはリジンミミックは合成化合物である。
【0184】
所定のトリプシンインヒビターは、以下の式の化合物を含み:
【化12】

ここで:
は、−O−Qまたは−Q−COOHから選択され、ここで、Qは、C−Cアルキルであり;
は、NまたはCHであり;かつ
は、アリールまたは置換アリールである。
【0185】
所定のトリプシンインヒビターは、以下の式の化合物を含み:
【化13】

ここで:
は、−C(O)−COOHまたは−NH−Q−Q−SO−Cであって、ここで、
は、−(CH−COOHであり;
は、−(CH−Cであり;かつ
pは、1〜3の整数であり;かつ
rは、1〜3の整数である。
【0186】
所定のトリプシンインヒビターは、以下を含む:
【0187】
【表6】

【0188】
【表7】

【0189】
所定の実施形態では、トリプシンインヒビターは、SBTI、BBSI、化合物101、化合物106、化合物108、化合物109、または化合物110である。
【0190】
医薬組成物
上記で考察したように、本開示物は、トリプシンインヒビター、および切断される場合、フェノール性オピオイドの放出を容易にするトリプシン−不安定部分を含有するフェノール性オピオイドプロドラッグを含んでなる医薬組成物を提供する。フェノール性オピオイドプロドラッグおよびトリプシンインヒビターを含有する組成物の例を以下に記載する。
【0191】
式I〜VIとトリプシンインヒビターとの組み合わせ
本実施形態は、トリプシンインヒビターおよび一般式(I)の化合物、またはその薬学的に許容できる塩を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0192】
本実施形態は、トリプシンインヒビターおよび一般式(II)〜(VI)の化合物、またはその薬学的に許容できる塩を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0193】
所定の実施形態は、式Iの化合物とトリプシンインヒビターとの組み合わせを提供し、ここで、式Iのフェノール性オピオイドおよびトリプシンインヒビターを以下の表に示す。
【0194】
【表8】

【0195】
所定の実施形態は、式Iの化合物とトリプシンインヒビターとの組み合わせを提供し、ここで、式Iのフェノール性オピオイドおよびトリプシンインヒビターを以下の表に示す。
【0196】
【表9】

【0197】
所定の実施形態は、式Iの化合物とトリプシンインヒビターとの組み合わせを提供し、ここで、式Iのフェノール性オピオイドおよびトリプシンインヒビターを以下の表に示す。
【0198】
【表10】

【0199】
所定の実施形態は、式Iの化合物とトリプシンインヒビターとの組み合わせを提供し、ここで、式Iのフェノール性オピオイドおよびトリプシンインヒビターを以下の表に示す。
【0200】
【表11】

【0201】
所定の実施形態は、式IIの化合物とトリプシンインヒビターとの組み合わせを提供し、ここで、式IIのフェノール性オピオイドおよびトリプシンインヒビターを以下の表に示す。
【0202】
【表12】

【0203】
所定の実施形態は、式IIの化合物とトリプシンインヒビターとの組み合わせを提供し、ここで、式IIのフェノール性オピオイドおよびトリプシンインヒビターを以下の表に示す。
【0204】
【表13】

【0205】
所定の実施形態は、式IIの化合物とトリプシンインヒビターとの組み合わせを提供し、ここで、式IIのフェノール性オピオイドおよびトリプシンインヒビターを以下の表に示す。
【0206】
【表14】

【0207】
所定の実施形態は、式IIの化合物とトリプシンインヒビターとの組み合わせを提供し、ここで、式IIのフェノール性オピオイドおよびトリプシンインヒビターを以下の表に示す。
【0208】
【表15】

【0209】
所定の実施形態は、式IIIの化合物とトリプシンインヒビターとの組み合わせを提供し、ここで、式IIIのフェノール性オピオイドおよびトリプシンインヒビターを以下の表に示す。
【0210】
【表16】

【0211】
所定の実施形態は、式IIIの化合物とトリプシンインヒビターとの組み合わせを提供し、ここで、式IIIのフェノール性オピオイドおよびトリプシンインヒビターを以下の表に示す。
【0212】
【表17】

【0213】
所定の実施形態は、式IIIの化合物とトリプシンインヒビターとの組み合わせを提供し、ここで、式IIIのフェノール性オピオイドおよびトリプシンインヒビターを以下の表に示す。
【0214】
【表18】

【0215】
所定の実施形態は、式IIIの化合物とトリプシンインヒビターとの組み合わせを提供し、ここで、式IIIのフェノール性オピオイドおよびトリプシンインヒビターを以下の表に示す。
【0216】
【表19】

【0217】
所定の実施形態は、化合物1とトリプシンインヒビターとの組み合わせを提供し、ここで、トリプシンインヒビターを以下の表に示す。
【0218】
【表20】

【0219】
所定の実施形態は、化合物2とトリプシンインヒビターとの組み合わせを提供し、ここで、トリプシンインヒビターを以下の表に示す。
【0220】
【表21】

【0221】
所定の実施形態は、化合物3とトリプシンインヒビターとの組み合わせを提供し、ここで、トリプシンインヒビターを以下の表に示す。
【0222】
【表22】

【0223】
所定の実施形態は、化合物4とトリプシンインヒビターとの組み合わせを提供し、ここで、トリプシンインヒビターを以下の表に示す。
【0224】
【表23】

【0225】
本発明はまた、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、またはバリンのアミノ酸を含んでなる式またはI〜VIのいずれかを有するプロドラッグと組み合わせて使用することができるタンパク質同化に関係する他の酵素のインヒビターも含むことが理解されよう。
【0226】
本実施形態に従う医薬組成物は、薬学的に許容できるキャリアをさらに含んでなり得る。組成物は、例えば、錠剤、カプセル、薄フィルム、粉末、懸濁液、溶液、シロップ、分散液またはエマルジョンとして経口(バッカルおよび舌下を含む)投与に適切な形態で簡便に処方される。組成物は、製剤における従来の成分、例えば、1つ以上のキャリア、結合剤、潤滑剤、賦形剤(例えば、制御放出の特徴を付与するため)、pH調整剤、甘味剤、充填剤、着色剤またはさらなる活性薬剤を含有することができる。
【0227】
本実施形態に従う医薬組成物は、例えば、疼痛を患っているかまたは疼痛を患う危険性にある患者の治療において、有用である。
【0228】
患者は、ヒト、または非ヒト動物、例えば、ネコ、イヌもしくはウマのようなペット(伴侶)動物であり得る。
【0229】
投与方法
患者に投与しようとする式(I)〜(VI)の化合物の有効であるべき(即ち、疼痛の治療または予防に有効であるのに十分なフェノール性オピオイドの血液レベルを提供する)量は、特定の化合物のバイオアベイラビリティ、特定の化合物の消化管における酵素活性化への感受性、組成物中に存在するトリプシンインヒビターの量および有効性、ならびに患者の種、年齢、重量、性別および病態、投与様式および処方する医師の判断のような他の要因に依存する。一般に、用量は、1キログラムの体重あたり0.01〜20ミリグラム(mg/kg)の範囲であり得る。例えば、ヒドロモルフォンの残基を含んでなる化合物は、0.02〜0.5mg/kg体重または0.01〜10mg/kg体重または0.01〜2mg/kg体重の範囲で遊離のヒドロモルフォンを投与するのに等価な用量で投与することができる。一実施形態では、化合物は、血液中で達成されるフェノール性オピオイドのレベルが、0.5ng/ml〜10ng/mlの範囲にあるような用量で投与することができる。
【0230】
患者に投与しようとするトリプシンインヒビター有効であるべき(即ち、式(I)〜(VI)の化合物の単独投与がフェノール性オピオイドの過剰な暴露をもたらす場合に、フェノール性オピオイドの放出を減弱する)量は、特定の化合物の有効量および特定のインヒビターの有効性、ならびに患者の種、年齢、重量、性別および病態、投与様式および処方する医師の判断のような他の要因に依存する。一般に、インヒビターの用量は、式(I)〜(VI)の化合物の1mgあたり0.05〜50mgの範囲であり得る。所定の実施形態では、インヒビターの用量は、式(I)〜(VI)の化合物の1mgあたり0.001〜50mgの範囲であり得る。
【0231】
治療アプリケーション
もう1つの態様では、本実施形態は、疼痛の治療に使用するための本明細書において上記で説明した医薬組成物を提供する。
【0232】
本開示物は、疼痛の治療におけるフェノール性オピオイドプロドラッグおよびトリプシンインヒビターの使用を提供する。
【0233】
本開示物は、疼痛の治療のための医薬品の製造におけるフェノール性オピオイドプロドラッグおよびトリプシンインヒビターの使用を提供する。
【0234】
もう1つの態様では、本実施形態は、本明細書において上記で説明した医薬組成物の有効量を投与する工程を含んでなる、治療を必要とする患者において疼痛を治療する方法を提供する。
【0235】
プロドラッグからのフェノール性オピオイドのトリプシン仲介放出による制御(tamerping)の妨害
本開示物は、薬物乱用の可能性を低減する、式I〜VIの化合物およびトリプシンインヒビターを含んでなる組成物を提供する。トリプシンインヒビターは、トリプシンを適用して、インビトロでフェノール性オピオイドプロドラッグからのフェノール性オピオイドの放出を生じる使用者の能力を妨げることができる。例えば、乱用者が、トリプシンを、フェノール性オピオイドプロドラッグおよびトリプシンインヒビターを含む本実施形態の組成物と共にインキュベートすることを試みる場合、トリプシンインヒビターは、添加されたトリプシンの作用を低減することができ、それによって、乱用目的のためにフェノール性オピオイドを放出する試みが妨げられる。
【実施例】
【0236】
以下の実施例は、当業者に、本実施形態をどのように作製し、そして使用するかについて完全な開示および説明を提供するように記載されており、本発明者らが自らの発明と考えている範囲を限定することを意図するものではなく、また下記の実験が、実施されるすべてまたは唯一の実験として表すことを意図するものでもない。使用する数字(例えば、量、温度など)に関して、正確性を確実にする努力は行ってきたが、いくつかの実験誤差および偏差は考慮されるべきである。別段示さない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度はセルシウス度であり、そして圧力は大気またはその付近におけるものである。標準的な略称を使用し得る。
【0237】
実施例1:化合物1およびSBTIトリプシンインヒビターのラットへの経口投与
ヒドロモルフォン3−(N−メチル−N−(2−N’−アセチルアルギニルアミノ))エチルカルバメート(2007年12月6日に公開された国際公開第2007/140272号パンフレット、実施例3に記載のとおりに生成することができ、以後、化合物1と称する)およびSBTI(Glycine max(ダイズ)由来のトリプシンインヒビター(カタログ番号93620、1mgあたり約10,000単位、Sigma−Aldrich)をそれぞれ、生理食塩水に溶解した。
【0238】
経口投与前に16〜18時間(hr)絶食させ、頸静脈にカテーテル装着した雄性Sprague Dawleyラットに、化合物1およびSBTIの生理食塩溶液を、強制経口投与を介して、表1に示すように投薬した;1グループあたり4匹のラットに投薬した。SBTIを投薬する場合、化合物1の5分(min)前にそれを投与した。指定された時点において、血液サンプルを採取し、メタノールにクエンチし、14,000rpm、4℃で遠心分離し、そして高速液体クロマトグラフィー/質量分析(HPLC/MS)による分析まで−80℃で貯蔵した。
【0239】
表1は、ラットに一定量の化合物1および可変量のSBTIを投与した結果を示す。結果を、4匹のラットの各グループについて、ヒドロモルフォンの最大血液濃度(平均±標準偏差)として報告する。
【0240】
【表24】

【0241】
表1の結果は、より高いSBTI濃度において、約100%減弱に近似し得る用量依存的様式で、SBTIが、ヒドロモルフォンを放出する化合物1の能力を減弱することを示す。
【0242】
表1に示したラットから得られたデータはまた、20mg/kg化合物1(a)単独(黒丸記号を伴う実線)、(b)10mg/kgのSBTI(白四角記号を伴う点線)、(c)100mg/kgのSBTI(白三角記号を伴う点線)、(d)500mg/kgのSBTI(×記号を伴う実線)または(e)1000mg/kgのSBTI(黒四角記号を伴う実線)のラットへのPO投与後のヒドロモルフォンの経時的な平均血液濃度(±標準偏差)を比較する図1においても提供される。図1の結果は、ヒドロモルフォンを放出する化合物1の能力のSBTI減弱化により、Cmaxが抑制され、そして化合物1および10、100、500または1000mg/kgのSBTIを投与したラットの血液中へのそのようなヒドロモルフォン放出のTmaxが遅延されることを示す。
【0243】
実施例2:オボアルブミンの存在下での化合物1およびSBTIトリプシンインヒビターのラットへの経口投与
SBTIの役割を理解するための努力において、オボアルブミンを、非トリプシンインヒビタータンパク質コントロールとして使用した。ニワトリ卵白由来のアルブミン(オボアルブミン)(カタログ番号A7641、GradeVII、凍結乾燥粉末、Sigma−Aldrich)を、生理食塩水に溶解した。
【0244】
経口投与前に16〜18時間絶食させ、頸静脈にカテーテル装着した雄性Sprague Dawleyラット(1グループあたり4匹)に、化合物1およびSBTI(実施例1に記載のとおり)ならびにオボアルブミンの生理食塩溶液を、組み合わせて、そして強制経口投与を介して、表2に示すように投薬した。指定された時点において、血液サンプルを採取し、5,400rpm、4℃で5分間の遠心分離を介して血漿を回収し、そして100マイクロリットル(μl)の血漿を、各サンプルから、1μlのギ酸を含有する新鮮なチューブに移した。チューブを、5〜10秒間、ボルテックス撹拌し、直ちに、ドライアイス中に置き、次いで、HPLC/MSによる分析まで貯蔵した。
【0245】
表2は、示したような様々な量のオボアルブミン(OVA)および/またはSBTIを伴うまたは伴わない化合物1を投与したラットの結果を示す。結果を、4匹のラットの各グループについて、ヒドロモルフォンの最大血漿濃度(平均±標準偏差)として報告する。
【0246】
【表25】

【0247】
表2の結果は、オボアルブミンが、ヒドロモルフォンを放出する化合物1の能力にも、またはそのような放出を減弱するSBTIの能力にも有意な影響を及ぼさないことを示す。
【0248】
表2の第1、4および6列に示したラットから得られたデータはまた、20mg/kg化合物1(a)単独(丸記号を伴う実線)、(b)500mg/kgのOVA(三角記号を伴う点線)または(c)500mg/kgのOVAおよび500mg/kgのSBTI(四角記号を伴う点線)のラットへのPO投与後のヒドロモルフォンの経時的な平均血漿濃度(±標準偏差)を比較する図2においても提供される。図2の結果は、オボアルブミンの存在下であっても、ヒドロモルフォンを放出する化合物1の能力のSBTI減弱化により、Cmaxが抑制され、そして血漿中におけるそのようなヒドロモルフォンのTmaxが遅延されることを示す。20mg/kg化合物1を、500mg/kgのOVAおよび500mg/kgのSBTIと共に投与したラットは、8.0時間の血漿Tmaxを示したが、20mg/kg化合物1単独を投与したラットは、2.3時間の血漿Tmaxを示した。表2および図2の結果はまた、SBTIが、非特異的様式ではなく、特異的にトリプシンを阻害することによって、作用していることを示す。
【0249】
実施例3:化合物1およびBBSIインヒビターのラットへの経口投与
化合物1およびBBSI(Glycine max(ダイズ)由来のBowman−Birkトリプシン−キモトリプシンインヒビター、カタログ番号T9777、Sigma−Aldrich)を、それぞれ、生理食塩水に溶解した。
【0250】
化合物1およびBBSIの生理食塩溶液を、表3に示すように投薬した。投薬、サンプル採取および分析手順は、実施例1に記載のとおりであった。
【0251】
表3は、BBSIを伴うまたは伴わずに化合物1を投与したラットの結果を示す。結果を、4匹のラット(n=4)の各グループ、ならびに化合物1およびBBSIを投与した4匹のラットのうちの3匹(n=3)について、ヒドロモルフォンの最大血液濃度(平均±標準偏差)として報告する。
【0252】
【表26】

【0253】
表3の結果は、BBSIが、ヒドロモルフォンを放出する化合物1の能力を減弱することができることを示す。
【0254】
表3、第1および3列に示した個々のラットから得られたデータは、20mg/kg化合物1(a)単独(実線)または(b)100mg/kgのBBSI(点線)のラットへのPO投与後のヒドロモルフォンの経時的な個々の血液濃度を比較する図3において提供される。図3の結果は、少なくとも化合物1およびBBSIを投与した4匹のラットのうち3匹について、ヒドロモルフォンを放出する化合物1の能力のBBSI減弱化により、Cmaxが抑制され、そして血液中におけるそのようなヒドロモルフォンのTmaxが遅延されることを示す。
【0255】
実施例4:化合物2およびSBTIトリプシンインヒビターのラットへの経口投与
経口投与前に16〜18時間絶食させ、頸静脈にカテーテル装着した雄性Sprague Dawleyラット(1グループあたり4匹)に、化合物2(実施例11に記載のとおりに調製することができる)およびSBTI(実施例1に記載のとおりに調製することができる)の生理食塩溶液を、強制経口投与を介して、表4に示すように投薬した。SBTIを投薬する場合、化合物4の5分前にそれを投与した。指定された時点において、血液サンプルを採取し、処理し、そして実施例2に記載のとおりに分析した。
【0256】
表4および図4は、示したような500mg/kgのSBTIを伴うまたは伴わずに20mg/kgの化合物2を投与したラットの結果を提供する。表4の結果を、4匹のラットの各グループについて、(a)ヒドロモルフォン(HM)の最大血漿濃度(Cmax)(平均±標準偏差)および(b)SBTIを伴うまたは伴わない化合物2の投与後の最大ヒドロモルフォン濃度に到達するまでの時間(Tmax)として報告する。
【0257】
【表27】

【0258】
図4は、20mg/kg化合物2単独(実線)または500mg/kgのSBTI(点線)のラットへのPO投与後のヒドロモルフォン放出の経時的な平均血漿濃度(±標準偏差)を比較している。
【0259】
表4および図4の結果は、Cmaxの抑制およびTmaxの遅延の両方に関して、SBTIが、ヒドロモルフォンを放出する化合物2の能力を減弱することを示す。
【0260】
実施例5:化合物3およびSBTIトリプシンインヒビターのラットへの経口投与
化合物3(実施例12に記載のとおりに調製することができる)およびSBTIの生理食塩溶液を、表5に示すように、投薬した。投薬、サンプル採取および分析手順は、実施例4に記載のとおりであった。
【0261】
表5および図5は、示したような500mg/kgのSBTIを伴うまたは伴わずに20mg/kgの化合物3を投与したラットの結果を提供する。表5の結果を、4匹のラットの各グループについて、血漿中ヒドロモルフォンのCmaxおよびTmaxとして報告する。
【0262】
【表28】

【0263】
図5は、20mg/kg化合物3単独(実線)または500mg/kgのSBTI(点線)のラットへのPO投与後のヒドロモルフォン放出の経時的な平均血漿濃度(±標準偏差)を比較している。
【0264】
表5および図5の結果は、Cmaxの抑制およびTmaxの遅延の両方に関して、SBTIが、ヒドロモルフォンを放出する化合物3の能力を減弱することを示す。
【0265】
実施例6:化合物4およびSBTIトリプシンインヒビターのラットへの経口投与
化合物4(実施例13に記載のとおりに調製することができる)およびSBTIの生理食塩溶液を、表6に示すように、投薬した。化合物4を、インヒビターを伴わずに、7匹のラットに投与したことを除いて、投薬、サンプル採取および分析手順は、実施例4に記載のとおりであった。
【0266】
表6および図6は、示したような500mg/kgのSBTIを伴うまたは伴わずに20mg/kgの化合物4を投与したラットの結果を提供する。表6の結果を、4匹のラットの各グループについて、血漿中ヒドロモルフォンのCmaxおよびTmaxとして報告する。
【0267】
【表29】

【0268】
図6は、20mg/kg化合物4単独(実線)または500mg/kgのSBTI(点線)のラットへのPO投与後のヒドロモルフォン放出の経時的な平均血漿濃度(±標準偏差)を比較している。
【0269】
表6および図6の結果は、少なくともTmaxの遅延に関して、SBTIが、ヒドロモルフォンを放出する化合物4の能力を減弱することを示す。
【0270】
実施例7:インビトロIC50データ
いくらかの候補トリプシンインヒビター、即ち、化合物101〜105、107および108を、それぞれ、実施例14〜18、19および20に記載のとおりに生成した。化合物106(4−アミノベンザミジンとしても公知である)、化合物109(ナファモスタットメシレートとしても公知である)および化合物110(ペンタミジンイセチオネート塩としても公知である)は、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)より入手可能である。
【0271】
化合物101〜110のそれぞれならびにSBTIおよびBBSIの半最大阻害濃度(IC50またはIC50)値を、Bergmeyer,HU et al,1974,Methods of Enzymatic Analysis Volume1,2nd edition,515−516,Bergmeyer,HU,ed.,Academic Press,Inc.New York,NYに記載のように、改変されたトリプシンアッセイを使用して、決定した。
【0272】
表7は、示されたトリプシンインヒビターのそれぞれについてのIC50値を示す。
【0273】
【表30】

【0274】
表7の結果は、化合物101〜110のそれぞれが、トリプシン阻害活性を示すことを示す。
【0275】
実施例8:化合物4からのヒドロモルフォンのインビトロでのトリプシン−仲介トリプシン放出に対するトリプシンインヒビターの効果
化合物4(実施例13に記載のとおりに生成することができる)を、次のトリプシンインヒビターのうちの1つの非存在下または存在下でウシ膵臓由来のトリプシン(カタログ番号T8003、TypeI、約10,000BAEE単位/mgタンパク質、Sigma−Aldrich)と共にインキュベートした:SBTI、化合物107、化合物108または化合物109。トリプシンインヒビターがインキュベーション混合物の一部であった場合、他のインキュベーション成分の5分後に、化合物4を添加した。反応を、37℃で24時間、行った。サンプルを、指定された時点において回収し、アセトニトリル中0.5%ギ酸に移して、トリプシン活性を停止し、そしてLC−MS/MSによる分析まで、−70℃未満で貯蔵した。
【0276】
最終的なインキュベーション混合物は、以下の成分からなった:
【0277】
【表31】

【0278】
図7Aおよび7Bは、任意のトリプシンインヒビター(菱形記号)の非存在下または10mg/mlのSBTI(丸記号)、1.67mg/ml化合物107(上向き三角記号)、1.67mg/ml化合物108(四角記号)または1.67mg/ml化合物109(下向き三角記号)の存在下で、0.51mg/ml化合物4を22.8ng/mlトリプシンに暴露した結果を示す。具体的には、これらの条件下で経時的に、図7Aは、化合物4の消失を示し、そして図7Bは、ヒドロモルフォンの出現を示す。
【0279】
図7Aおよび7Bの結果は、本実施形態のトリプシンインヒビターが、化合物4からのヒドロモルフォンの放出を生じさせるためにトリプシンを適用する使用者の能力を妨げることができることを示す。
【0280】
実施例9:化合物3および化合物101トリプシンインヒビターのラットへの経口投与
化合物3(実施例12に記載のとおりに調製することができる)および化合物101(実施例14に記載のとおりに調製することができる)の生理食塩溶液を、表8に示すように、投薬した。化合物3および化合物101を、投薬のために組み合わせたことを除いて、投薬、サンプル採取および分析手順は、実施例4に記載のとおりであった。
【0281】
表8および図8は、示したような10mg/kgの化合物101を伴うまたは伴わずに20mg/kgの化合物3を投与したラットの結果を提供する。表8の結果を、4匹のラットの各グループについて、血漿中ヒドロモルフォンのCmaxおよびTmaxとして報告する。
【0282】
【表32】

【0283】
図8は、20mg/kg化合物3単独(実線)または10mg/kgの化合物101(点線)のラットへのPO投与後のヒドロモルフォン放出の経時的な平均血漿濃度(±標準偏差)を比較している。
【0284】
表8および図8の結果は、Cmaxの抑制およびTmaxの遅延の両方に関して、化合物101が、ヒドロモルフォンを放出する化合物3の能力を減弱することを示す。
【0285】
実施例10:化合物4および化合物101トリプシンインヒビターのラットへの経口投与
化合物4(実施例13に記載のとおりに調製することができる)および化合物101(実施例14に記載のとおりに調製することができる)の生理食塩溶液を、表9に示すように、投薬した。化合物4および化合物101を、投薬のために組み合わせ、そして化合物4を、インヒビターを伴わずに、7匹のラットに投与したことを除いて、投薬、サンプル採取および分析手順は、実施例4に記載のとおりであった。
【0286】
表9および図9は、示したような10mg/kgの化合物101を伴うまたは伴わずに20mg/kgの化合物4を投与したラットの結果を提供する。表9の結果を、4匹のラットの各グループについて、血漿中ヒドロモルフォンのCmaxおよびTmaxとして報告する。
【0287】
【表33】

【0288】
図9は、20mg/kg化合物4単独(実線)または10mg/kgの化合物101(点線)のラットへのPO投与後のヒドロモルフォン放出の経時的な平均血漿濃度(±標準偏差)を比較している。
【0289】
表9および図9の結果は、Cmaxの抑制およびTmaxの遅延の両方に関して、化合物101が、ヒドロモルフォンを放出する化合物4の能力を減弱することを示す。
【0290】
実施例11
[2−((S)−2−アミノ−5−グアニジノ−ペンタノイルアミノ)−エチル]−メチル−カルバミン酸ヒドロモルフィル(hydromorphyl)エステル(化合物2)の合成
【化14】

調製1
2,2,2−トリフルオロ−N−(2−メチルアミノ−エチル)−アセトアミド(A)の合成
アセトニトリル(350ml)および水(7.8ml、436mmol)の混合物中N−メチルエチレンジアミン(27.0g、364.0mmol)およびエチルトリフルオロアセテート(96.6ml、838.0mmol)の溶液を、1晩、撹拌しながら、還流した。次に、溶媒を、減圧下でエバポレートした。残渣を、イソプロパノール(3×100ml)と共に再エバポレートした。残渣を、ジクロロメタン(500ml)に溶解し、そして1晩、室温で放置した。形成した結晶を濾過し、ジクロロメタンで洗浄し、そして減圧下で乾燥して、白色の固体粉末として化合物A(96.8g、94%)を提供した。
【0291】
調製2
{メチル−[2−(2,2,2−トリフルオロ−アセチルアミノ)−エチル]−カルバミン酸ベンジルエステル(B)の合成
THF(350ml)中化合物A(96.8g、340.7mmol)およびDIEA(59.3ml、340.7mmol)の溶液を、約5℃に冷却し、続いて、THF(150ml)中N−(ベンジルオキシカルボニル)スクシンイミド(84.0g、337.3mmol)の溶液を、滴下で20分間の期間、添加した。反応混合物の温度を室温にまで上昇させ、そして撹拌をさらに30分間継続し、続いて、溶媒をエバポレートした。得られた残渣を、EtOAc(600ml)に溶解した。EtOAcを、5%NaHCO水溶液(2×150ml)および塩水(150ml)で抽出した。有機層を分離およびエバポレートして、黄色がかったオイルとして化合物B(103.0g、340.7mmol)を提供した。LC−MS[M+H]305.3(C1315+H、計算値:305.3)。化合物Bを、さらなる精製を伴わずに使用した。
【0292】
調製3
(2−アミノ−エチル)−メチル−カルバミン酸ベンジルエステル(C)の合成
MeOH(1200ml)中化合物B(103.0g、340.7mmol)の溶液に、水(120ml)中LiOH(16.4g、681.4mmol)の溶液を添加した。反応混合物を室温で3時間、撹拌した。溶媒を、最初の容積の3/4にまでエバポレートし、続いて、水(400ml)で希釈した。溶液を、EtOAc(2×300ml)で抽出した。有機層を塩水(200ml)で洗浄し、MgSO上で乾燥させ、そして減圧下でエバポレートした。得られた残渣をエーテル(300ml)に溶解し、そして2NのHCl/エーテル(200ml)で処置した。形成した沈殿物を濾過し、エーテルで洗浄し、そして減圧下で乾燥して、白色の固体として化合物Cの塩酸塩(54.5g、261.2mmol)を提供した。LC−MS[M+H]209.5(C1116+H、計算値:209.3)。
【0293】
調製4
{(S)−4−({アミノ−[(E)−2,2,4,6,7−ペンタメチル−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−5−スルホニルイミノ]−メチル}−アミノ)−1−[2−(ベンジルオキシカルボニル−メチル−アミノ)−エチルカルバモイル]−ブチル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル(D)の合成
DMF(40ml)中Boc−Arg(Pbf)−OH(3.33g、6.32mmol)、HATU(2.88g、7.58mmol)およびDIEA(7.4ml、31.6mmol)の溶液を、室温で20分間維持し、続いて、化合物Cの塩酸塩(1.45g、6.95mmol)を添加した。撹拌を、さらに1時間、継続した。反応混合物を、EtOAc(500ml)で希釈し、そして水(3×75ml)および塩水(75ml)で抽出した。有機層をMgSO上で乾燥させ、次いで、エバポレートして、黄色がかった無定形固体として化合物D(4.14g、5.77mmol)を提供した。LC−MS[M+H]717.6(C3552S+H、計算値:717.9)。
【0294】
調製5
(S)−2−アミノ−5−({アミノ−[(E)−2,2,4,6,7−ペンタメチル−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−5−スルホニルイミノ]−メチル}−アミノ)−ペンタン酸(2−メチルアミノ−エチル)−アミド(E)の合成
化合物D(4.14g、5.77mmol)およびAcOH(330μl、5.77mmol)をメタノール(40ml)に溶解し、続いて、水(5ml)中Pd/C(5%wt、880mg)懸濁液を添加した。反応混合物を、室温で2.5時間、水素化(Parr装置、75psi)に供した。触媒を、焼結ガラス漏斗上のCeliteのパッド上で濾過し、そしてメタノールで洗浄した。濾液を減圧下でエバポレートして、黄色がかった無定形固体として化合物E(1.96g、3.2mmol)を提供した。LC−MS[M+H]483.2(C2238S+H、計算値:483.2)。
【0295】
調製6
{(S)−4−({アミノ−[(E)−2,2,4,6,7−ペンタメチル−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−5−スルホニルイミノ]−メチル}−アミノ)−1−[2−(ヒドロモルフィルカルボニル−メチル−アミノ)−エチルカルバモイル]−ブチル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル(F)の合成
クロロホルム(4ml)中ヒドロモルフォン塩酸塩(332mg、1.03mmol)およびDIEA(179μl、1.03mmol)の懸濁液を、室温で1時間、超音波浴中で音波処理した。これに続いて、4−ニトロフェニルクロロホルメート(162mg、0.80mmol)を添加した。反応混合物を、超音波浴中、室温でさらに1時間、音波処理し、続いて、DMF(4ml)中化合物E(400mg、0.67mmol)および1−ヒドロキシベンゾ−トリアゾール(154mg、1.14mmol)の溶液を添加した。反応混合物を、1晩(約18時間)、室温で撹拌し、続いて、溶媒を減圧下でエバポレートした。残渣をMeOH(5ml)に溶解し、そしてエーテル(500ml)の添加により沈殿させた。形成した沈殿物を濾過し、そして減圧下で乾燥して、オフホワイト色固体として化合物F(520mg、収量が定量値を超えた)を提供した。LC−MS[M+H]894.6(C456310S+H、計算値:894.9)。
【0296】
[2−((S)−2−アミノ−5−グアニジノ−ペンタノイルアミノ)−エチル]−メチル−カルバミン酸ヒドロモルフィル(hydromorphyl)エステル(化合物2)の合成
化合物F(679mg、0.76mmol)を、5%m−クレゾール/TFA(10ml)の混合物に溶解した。反応混合物を室温で1時間、維持し、続いて、エーテル(500ml)で希釈した。形成した沈殿物を濾過し、エーテル(100ml)で洗浄し、そして減圧下で乾燥して、オフホワイト色固体として粗化合物2(441mg、収量が定量値を超えた)を提供した。LC−MS[M+H]542.4(C2739+H、計算値:542)。
【0297】
粗化合物2を水(10ml)に溶解し、そして調製用逆相HPLC精製に供した。[Nanosyn−Pack Microsorb(100−10)C−18カラム(50×300mm);流速=100ml/min;注入容積10ml;移動相A:100%水、0.1%TFA;移動相B:100%アセトニトリル、0.1%TFA;5分における0%Bでの均一濃度溶離、6分における6%Bでの勾配溶離、23分における6%Bでの均一濃度溶離、66分における6%B〜55%Bでの勾配溶離;254nmでの検出]。所望の化合物を含有する画分を合わせ、そして減圧下で濃縮した。残基をi−PrOH(20ml)に溶解し、そして減圧下でエバポレートした(手順を2回反復した)。残渣をi−PrOH(2ml)に溶解し、そして2NのHCl/エーテル(100ml、200mmol)で処置して、白色固体として化合物2の塩酸塩(80mg、17%収率、98%純度)を提供した。LC−MS[M+H]542.0(C2739+H、計算値:542.9)。保持時間:2.04分。
【0298】
−[Chromolith SpeedRod RP−18eC18カラム(4.6×50mm);流速1.5ml/min;移動相A:0.1%TFA/水;移動相B0.1%TFA/ACN;5%B〜100%Bで9.6分間の勾配溶離、検出254nm]。
【0299】
実施例12
(S)−2−アセチルアミノ−6−アミノ−ヘキサン酸(2−メチルアミノ−エチル)−アミドヒドロモルフォンエステル(化合物3)の合成
【化15】

調製7
{(S)−1−[2−(ベンジルオキシカルボニル−メチル−アミノ)−エチルカルバモイル]−5−tert−ブトキシカルボニルアミノ−ペンチル}−カルバミン酸9H−フルオレン−9−イルメチルエステル(G)の合成
DMF(50mL)中Fmoc−Lys(Boc)−OH(2.0g、4.26mmol)の溶液に、DIEA(2.38mL、13.65mmol)を添加し、そして15分間、室温で撹拌した。次いで、反応混合物を、約5℃にまで冷却し、続いて、HATU(1.95g、5.12mmol)を少しずつ添加し、そして30分間、撹拌した。CBZ−ジアミン(1.05g、4.26mmol)を添加し、そして反応混合物を室温で2時間、撹拌した。反応混合物を、EtOAc(250mL)で希釈し、そして水(250ml)および塩水(250mL)で抽出した。有機層を分離し、NaSO上で乾燥させ、そして減圧下で溶媒を取り出すことにより、化合物G(2.3g、82%)を得た。LC−MS[M+H]659.6(C3746+H、計算値:659.7)。
【0300】
調製8
{(S)−5−アミノ−5−[2−(ベンジルオキシカルボニル−メチル−アミノ)−エチルカルバモイル]−ペンチル}−カルバミン酸イソプロピルエステル(H)の合成
EtOAC(50ml)中化合物G(2.3g、3.49mmol)の溶液に、ピペリジン(0.34mL、3.49mmol)を添加した。反応混合物を18時間、室温で撹拌し、次いで、溶媒を、減圧下で取り出した。残渣を最小量のEtOAcに溶解し、次いで、EtOで沈殿させた。沈殿物を濾過して取り出し、そしてEtOで洗浄し、そして乾燥させて、化合物H(1.4g、94%)を得た。LC−MS[M+H]437.6(C2236+H、計算値:437.5)。
【0301】
調製9
{(S)−5−アセチルアミノ−5−[2−(ベンジルオキシカルボニル−メチル−アミノ)−エチルカルバモイル]−ペンチル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル(I)の合成
CHCl(10mL)中化合物H(1.4g、3.21mmol)の溶液に、室温でDIEA(2.6mL、15mmol)を添加し、続いてAcO(0.85mL、9.0mmol)を添加した。反応混合物を室温で2時間、撹拌した。溶媒を減圧下で取り出し、次いで、残渣をジクロロメタン(100mL)に溶解した。有機層を、10%クエン酸(75mL)、飽和NaHCO(75mL)および塩水(75mL)で洗浄した。有機層を分離し、NaSO上で乾燥させ、そして減圧下で溶媒を取り出すことにより、化合物I(1.45g、99%)を得た。LC−MS[M+H]479.5(C2438+H、計算値:479.5)。
【0302】
調製10
[(S)−5−アセチルアミノ−5−(2−メチルアミノ−エチルカルバモイル)−ペンチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(J)の合成
MeOH(40mL)中化合物I(1.4g、3.00mmol)の溶液に、5%Pd/C(300mg)を添加した。反応混合物を、70psiで2時間、水素化に供した。次に、反応混合物をceliteパッドを介して濾過し、MeOHをロータリーエバポレーターにおいて取り出して、化合物J(1.02g、98%)を得た。LC−MS[M+H]344.9(C1632+H、計算値:345.4)。
【0303】
調製11
[(S)−5−アセチルアミノ−5−(2−メチルアミノ−エチルカルバモイル)−ペンチル]−カルバミン酸tert−ブチル−ヒドロモルフォン−ジ−エステル(L)
ヒドロモルフォンHCl塩(1.24g、3.86mmol)およびDIEA(0.67mL、3.86mmol)を、CHCl(12mL)に懸濁し、そして1時間、室温で音波処理した。4−ニトロフェニルクロロホルメート(600mg、2.97mmol)を反応混合物に添加し、次いで、100分間、音波処理した。活性化されたヒドロモルフォン反応混合物に、DMF(12mL)中化合物J(1.02g、2.97mmol)およびHOBt(0.52g、3.86mmol)の溶液を滴下で添加し、そして室温で1晩(約18時間)撹拌した。次いで、溶媒を減圧下で取り出し、そして残渣を最小量のMeOHに溶解し、そして過剰のEtOで沈殿させた。沈殿物を濾過して取り出し、EtOで洗浄し、そして減圧下で乾燥して、化合物Lを得た。LC−MS[M+H]656.9(C3449+H、計算値:656.7)。この粗生成物を、調製用逆相HPLCによって精製した。[カラム:VARIAN,LOAD&LOCK,L&L4002−2パッキング:Microsob100−10C18、注入容積:約15mL、注入流速:20mL/min、100%A、(水/0.1%TFA)、流速:100mL/min、分画:30秒間(50mL)方法:0%B(MeCN/0.1%TFA)/2分/75%B/96分/100ml/min/254nm]。精製画分を合わせ、溶媒を減圧下で取り出した。残渣を、i−PrOH(4×100mL)との共エバポレーションを介して乾燥して、黄色のオイルとして化合物L(0.90g、46%)を得た。
【0304】
(S)−2−アセチルアミノ−6−アミノ−ヘキサン酸(2−メチルアミノ−エチル)−アミドヒドロモルフォンエステル(化合物3)の合成
化合物L(0.90g、1.37mmol)をジオキサン(約2mL)に懸濁し、音波処理し、そして4.0NのHCl/ジオキサン(約20mL)により室温で処置した。白色の沈殿物が直ちに形成された。次に、混合物を、EtO(200mL)、ヘキサン(20mL)で希釈し、そして沈殿物を濾過して取り出し、そしてEtO(100mL)、ヘキサン(100mL)で洗浄し、そして減圧下で乾燥して、化合物3(0.67g、78%収率、97.5%純度)を得た。LC−MS[M+H]556.3(C2941+H、計算値:556.6)。
【0305】
実施例13
[2−((S)−2−アセチルアミノ−5−グアニジノ−ペンタノイルアミノ)−エチル]−エチル−カルバミン酸ヒドロモルフォンエステル(化合物4)の合成
【化16】

調製12
2,2,2−トリフルオロ−N−(2−エチルアミノ−エチル)−アセトアミド(M)の合成
アセトニトリル(110ml)および水(2.5ml、139mmol)の混合物中N−エチルエチレンジアミン(10.0g、113.4mmol)およびエチルトリフルオロアセテート(32.0ml、261mmol)の溶液を、1晩(約18時間)、撹拌しながら、還流した。溶媒を、減圧下でエバポレートした。残渣を、i−PrOH(3×100ml)と共に再エバポレートした。残渣を、ジクロロメタン(500ml)に溶解し、そして1晩、室温で放置した。形成した結晶を濾過し、ジクロロメタン(100ml)で洗浄し、そして減圧下で乾燥して、白色の固体粉末として化合物M(24.6g、82.4mmol)を提供した。
【0306】
調製13
{エチル−[2−(2,2,2−トリフルオロ−アセチルアミノ)−エチル]−カルバミン酸ベンジルエステル(N)の合成
THF(100ml)中化合物M(24.6g、82.4mmol)およびDIEA(14.3ml、82.4mmol)の溶液を、約5℃に冷却し、続いて、THF(75ml)中N−(ベンジルオキシカルボニル)スクシンイミド(20.3g、81.6mmol)の溶液を、滴下で20分間、添加した。反応混合物の温度を室温にまで上昇させ、そして撹拌をさらに30分間継続した。溶媒をエバポレートし、そして残渣をEtOAc(500ml)に溶解した。有機層を、5%NaHCO水溶液(2×100ml)および塩水(100ml)で抽出した。有機層をエバポレートして、黄色がかったオイルとして化合物N(24.9g、78.2mmol)を提供した。LC−MS[M+H]319.0(C1417+H、計算値:319.2)。化合物Nを、さらなる精製を伴わずに使用した。
【0307】
調製14
(2−アミノ−エチル)−エチル−カルバミン酸ベンジルエステル(O)の合成
MeOH(300ml)中化合物N(24.9g、78.2mmol)の溶液に、水(30ml)中LiOH(3.8g、156mmol)の溶液を添加した。反応混合物を室温で5時間、撹拌した。次に、溶媒を、初期の容積の3/4にまでエバポレートし、続いて、水(200ml)で希釈した。溶液をEtOAc(200ml×2)で抽出し、そして有機層を塩水(100ml)で洗浄し、MgSO上で乾燥させ、そして減圧下でエバポレートした。残渣をエーテル(200ml)に溶解し、そして2NのHCl/エーテル(200ml)で処置した。形成した沈殿物を濾過し、エーテルで洗浄し、そして減圧下で乾燥して、白色の固体として化合物Oの塩酸塩(12.1g、46.7mmol)を提供した。LC−MS[M+H]222.9(C1218+H、計算値:223.2)。
【0308】
調製15
{2−[boc−Arg(Pbf)]−アミノエチル}−エチル−カルバミン酸ベンジルエステル(P)の合成
DMF(20ml)中Boc−Arg(Pbf)−OH(3.0g、5.69mmol)、化合物O(1.62g、6.26mmol)、DIEA(3.17ml、18.21mmol)およびHATU(2.59g、6.83mmol)の溶液を、室温で1時間、撹拌した。反応混合物を、EtOAc(300ml)で希釈し、そして水(3×75ml)および塩水(75ml)で抽出した。有機層をMgSO上で乾燥させ、濾過し、次いで、エバポレートして、黄色がかったオイルとして化合物P(5.97g、収量が定量値を超えた)を提供した。LC−MS[M+H]731.5(C3654S+H、計算値:731.7)。化合物Pを、さらなる精製を伴わずに使用した。
【0309】
調製16
{2−[H−Arg(Pbf)]−アミノエチル}−エチル−カルバミン酸ベンジルエステル(Q)の合成
化合物P(5.69mmol)をジオキサン(20ml)に溶解し、そして4NのHCl/ジオキサン(100ml、70mmol)により室温で1時間、処置した。次いで、溶媒を減圧下で取り出し、続いて、i−PrOH(50ml)に懸濁し、最後に、溶媒をエバポレートして、残留する溶媒を取り出した(手順を2回反復した)。粗反応混合物を減圧下で乾燥して、黄色がかった固体として化合物Q(5.97、収量が定量値を超えた)を提供した。LC−MS[M+H]631.5(C3146S+H、計算値:631.2)。化合物Qを、さらなる精製を伴わずに使用した。
【0310】
調製17
{2−[Ac−Arg(Pbf)]−アミノエチル}−エチル−カルバミン酸ベンジルエステル(R)の合成
クロロホルム(20ml)中化合物Q(5.69mmol)、AcO(649μl、6.83mmol)およびDIEA(2.97ml、17.07mmol)の溶液を、室温で1時間、撹拌した。これに続いて、2MのEtNH/THF(1.71ml、3.41mmol)を添加した。反応混合物を室温でさらに30分間、撹拌し、続いて、EtOAc(300ml)で希釈した。有機層を、水(75ml)、2%HSO水溶液(75ml)、水(3×75ml)および塩水(75ml)で抽出した。次いで、有機層をMgSO上で乾燥させ、そしてエバポレートして、黄色がかった固体として化合物R(3.99g、収量が定量値を超えた)を提供した。LC−MS[M+H]673.6(C3348S+H、計算値:672.9)。化合物Rを、さらなる精製を伴わずに使用した。
【0311】
調製18
N−[Ac−Arg(Pbf)]−N’−エチル−エタン−1,2−ジアミン(S)の合成
化合物R(5.69mmol)をメタノール(50ml)に溶解し、続いて、水(5ml)中Pd/C(5%wt、1g)懸濁液を添加した。反応混合物を、室温で1時間、水素化(Parr装置、80psi)に供した。終了時、触媒を、焼結ガラス漏斗上のCeliteのパッドにおいて濾過し、そしてメタノールで洗浄した。濾液を減圧下でエバポレートして、無色のオイルとして化合物S(3.06g、定量的収量)を提供した。LC−MS[M+H]539.5(C2542S+H、計算値:539.9)。化合物Sを、さらなる精製を伴わずに使用した。
【0312】
[2−(2−アセチルアミノ−5−グアニジノ−ペンタノイルアミノ)−エチル]−エチル−カルバミン酸ヒドロモルフォンエステル(化合物4)の合成
クロロホルム(8ml)中ヒドロモルフォン塩酸塩(2.75g、8.54mmol)およびDIEA(1.49ml、8.54mmol)の懸濁液を、超音波浴中、室温で1時間、音波処理し、続いて、4−ニトロフェニルクロロホルメート(1.38g、6.83mmol)を添加した。反応混合物を、超音波浴中、室温でさらに1時間、音波処理し、続いて、DMF(8ml)中化合物S(3.06g、5.69mmol)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.31g、9.67mmol)の溶液を添加した。反応混合物を、1晩(約18時間)、室温で撹拌し、続いて、溶媒を減圧下でエバポレートした。粗反応混合物をMeOH(10ml)に溶解し、そしてエーテル(500ml)で沈殿させた。形成した沈殿物を濾過し、そして減圧下で乾燥して、オフホワイト色固体としてPbf保護された化合物4(6.96g、収量が定量値を超えた)を提供した。LC−MS[M+H]850.6(C4359S+H、850.2を要する)。
【0313】
Pbf保護された化合物4を、5%m−クレゾール/TFA(100ml)の混合物に溶解した。反応混合物を室温で1時間、維持し、続いて、エーテル(2L)で希釈した。沈殿物が形成され、続いて、焼結ガラス漏斗上で濾過し、エーテル(200ml)で洗浄し、そして減圧下で乾燥して、オフホワイト色固体として粗化合物4(5.2g、97%)を提供した。粗化合物4(5.2g、5.54mmol)を水(50ml)に溶解し、そしてHPLC精製に供した。[Nanosyn−Pack Microsorb(100−10)C−18カラム(50×300mm);流速=100ml/min;注入容積50ml;移動相A:100%水、0.1%TFA;移動相B:100%アセトニトリル、0.1%TFA;5分における0%Bでの均一濃度溶離、6分における6%Bでの勾配溶離、13分における6%Bでの均一濃度溶離、76分における6%B〜55%Bでの勾配溶離;254nmでの検出]。所望の化合物を含有する画分を合わせ、そして減圧下で濃縮した。残基をi−PrOH(50ml)に溶解し、そして減圧下でエバポレートした(手順を2回反復した)。残渣をi−PrOH(50ml)に溶解し、そして2NのHCl/エーテル(200ml、400mmol)で処置して、白色固体として化合物4の塩酸塩(1.26g、32%収率、95.7%純度)を提供した。LC−MS[M+H]598.4(C3043+H、計算値:598.7)。保持時間:2.53分
【0314】
−[Chromolith SpeedRod RP−18eC18カラム(4.6×50mm);流速1.5ml/min;移動相A:0.1%TFA/水;移動相B0.1%TFA/ACN;5%B〜100%Bで9.6分間の勾配溶離、検出254nm]。
【0315】
実施例14
(S)−エチル4−(5−グアニジノ−2−(ナフタレン−2−スルホンアミド)ペンタノイル)ピペラジン−1−カルボキシレート(化合物101)の合成
【化17】

調製19
4−[(S)−5−({アミノ−[(E)−2,2,4,6,7−ペンタメチル−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−5−スルホニルイミノ]−メチル}−アミノ)−2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−ペンタノイル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(T)の合成
DMF(200mL)中Fmoc−Arg(Pbf)−OH1(25.0g、38.5mmol)の溶液に、室温でDIEA(13.41mL、77.1mmol)を添加した。室温で10分間、撹拌した後、反応混合物を約5℃にまで冷却した。反応混合物にHATU(16.11g、42.4mmol)を少しずつ添加し、そして20分間撹拌し、そしてDMF(50mL)中tert−ブチル−1−ピペラジンカルボキシレート(7.18g、38.5mmol)の溶液を滴下で添加した。反応混合物を約5℃で5分間、撹拌した。次いで、反応混合物を室温まで加温し、そして2時間、撹拌した。溶媒を減圧下で取り出し、そして残渣をEtOAc(500mL)に溶解し、水(2×750mL)、1%HSO(300mL)および塩水(750mL)で洗浄した。有機層を分離し、NaSO上で乾燥させ、そして減圧下で溶媒を取り出して、100mLの全容積とした。化合物Tを、EtOAc溶液(100mL)として、次の工程のために採取した。LC−MS[M+H]817.5(C4356S+H、計算値:817.4)。
【0316】
調製20
4−[(S)−2−アミノ−5−({アミノ−[(E)−2,2,4,6,7−ペンタメチル−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−5−スルホニルイミノ]−メチル}−アミノ)−ペンタノイル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(U)の合成
EtOAc(175mL)中化合物T(46.2mmol)の溶液に、室温で、ピペリジン(4.57mL、46.2mmol)を添加し、そして反応混合物を18時間、室温で撹拌した。次に、溶媒を減圧下で取り出し、そして得られた残渣を、最小量のEtOAc(約50mL)に溶解し、そしてヘキサン(約1L)を添加した。沈殿した粗生成物を濾過して取り出し、そしてEtOAc(約30mL)およびヘキサン(約750mL)で再度、再結晶化させた。沈殿物を濾過して取り出し、ヘキサンで洗浄し、そして減圧下で乾燥して、化合物U(28.0g、46.2mmol)を得た。LC−MS[M+H]595.4(C2846S+H、計算値:595.3)。
【0317】
調製21
4−[(S)−5−({アミノ−[(E)−2,2,4,6,7−ペンタメチル−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−5−スルホニルイミノ]−メチル}−アミノ)−2−(ナフタレン−2−スルホニルアミノ)−ペンタノイル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(V)の合成
THF(250mL)中化合物U(28.0g、46.2mmol)の溶液に、1NのNaOH水溶液(171mL)を添加した。反応混合物を約5℃にまで冷却し、THF(125mL)中2−ナフタレンスルホニルクロリド(26.19g、115.6mmol)の溶液を滴下で添加した。反応混合物を約5℃で10分間、撹拌し、室温で2時間、撹拌を継続した。反応混合物を、EtOAc(1mL)で希釈し、1NのNaOH水溶液(1L)、水(1L)および塩水(1L)で洗浄した。有機層を分離し、NaSO上で乾燥させ、そして減圧下で溶媒を取り出すことにより、化合物V(36.6g、46.2mmol)を得た。LC−MS[M+H]785.5(C3852+H、計算値:785.9)。
【0318】
調製22
2,2,4,6,7−ペンタメチル−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−5−スルホン酸1−アミノ−1−[(S)−4−(ナフタレン−2−スルホニルアミノ)−5−オキソ−5−ピペラジン−1−イル−ペンチルアミノ]−メト−(E)−イリデンアミド(W)の合成
ジオキサン(60mL)中化合物V(36.6g、46.2mmol)の溶液に、ジオキサン(58mL)中4MのHClを滴下で添加した。反応混合物を室温で1.5時間、撹拌した。EtO(600mL)を反応混合物に添加し、沈殿した生成物を濾過して取り出し、EtOで洗浄し、そして最終的に、減圧下で乾燥して、化合物W(34.5g、46.2mmol)を得た。LC−MS[M+H]685.4(C3344+H、計算値:685.9)。化合物Wを、さらなる精製を伴わずに使用した。
【0319】
調製23
4−[(S)−5−({アミノ−[(E)−2,2,4,6,7−ペンタメチル−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−5−スルホニルイミノ]−メチル}−アミノ)−2−(ナフタレン−2−スルホニルアミノ)−ペンタノイル]−ピペラジン−1−カルボン酸エチルエステル(X)の合成

CHCl(50ml)中化合物W(8.0g、11.1mmol)の溶液に、DIEA(4.1mL、23.3mmol)を室温で添加し、そして15分間、撹拌した。混合物を約5℃にまで冷却し、エチルクロロホルメート(1.06mL、11.1mmol)を滴下で添加した。室温で1晩(約18時間)撹拌した後、溶媒を減圧下で取り出した。残渣をMeOH(約25ml)に溶解し、そしてEtO(約500mL)を添加した。沈殿した粗生成物を濾過して取り出し、EtOで洗浄し、そして減圧下で乾燥して、化合物X(8.5g、11.1mmol)を得た。LC−MS[M+H]757.6(C3648+H、計算値:757.9)。化合物Xを、さらなる精製を伴わずに使用した。
【0320】
(S)−エチル4−(5−グアニジノ−2−(ナフタレン−2−スルホンアミド)ペンタノイル)ピペラジン−1−カルボキシレート(化合物101)の合成
5%m−クレゾール/TFA(50ml)の溶液を、室温で化合物X(8.5g、11.1mmol)に添加した。1時間、撹拌した後、反応混合物をEtO(約500mL)で沈殿させた。沈殿物を濾過し、EtOで洗浄し、そして減圧下で乾燥して、粗生成物を得た。粗生成物を、調製用逆相HPLCによって精製した。[カラム:VARIAN、LOAD&LOCK、L&L4002−2、パッキング:Microsob100−10C18、注入容積:約15mL×2、注入流速:20mL/min、100%A、(水/0.1%TFA)、流速:100mL/min、分画:30秒間(50mL)方法:0%B(MeCN/0.1%TFA)/−60%B/60分/100ml/min/254nm]。減圧下で、純粋画分から溶媒を取り出した。2×i−PrOH(50ml)を伴う共エバポレーションによって、微量の水を取り出した。残渣を最小量のi−PrOHに溶解し、そしてEtO中2MのHClで沈殿させた。生成物を濾過して取り出し、そしてEtOで洗浄し、そして減圧下で乾燥して、HCl塩7として化合物101(3.78g、63%収率、99.4%純度)を得た。LC−MS[M+H]505.4(C3852+H、計算値:505.6)。
【0321】
実施例15
(S)−エチル4−(5−グアニジノ−2−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホンアミド)ペンタノイル)ピペラジン−1−カルボキシレート(化合物102)の合成
【化18】

調製24
4−[(S)−5−({アミノ−[(E)−2,2,4,6,7−ペンタメチル−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−5−スルホニルイミノ]−メチル}−アミノ)−2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−ペンタノイル]−ピペラジン−1−カルボン酸エチルエステル(Y)の合成
DMF(10mL)中Boc−Arg(Pbf)−OH(13.3g、25.3mmol)の溶液に、DIEA(22.0mL、126.5mmol)を室温で添加し、そして15分間、撹拌した。次いで、反応混合物を約5℃にまで冷却し、そしてHATU(11.5g、30.3mmol)を少しずつ添加し、そして30分間、撹拌し、続いて、DMF(30mL)中エチル−1−ピペラジンカルボキシレート(4.0g、25.3mmol)を滴下で添加した。40分間後、反応混合物をEtOAc(400mL)で希釈し、そしてHO(1L)に注いだ。EtOAc(2×400mL)で抽出し、そしてHO(800mL)、2%HSO(500mL)、HO(2×800mL)および塩水(800mL)で洗浄した。有機層を分離し、MgSO上で乾燥させ、そして溶媒を減圧下で取り出した。得られた油性残渣を、減圧下で乾燥して、泡状固体として化合物Y(16.4g、24.5mmol)を得た。LC−MS[M+H]667.2(C3150S+H、計算値:667.8)。化合物Yを、さらなる精製を伴わずに使用した。
【0322】
調製25
4−[(S)−2−アミノ−5−({アミノ−[(E)−2,2,4,6,7−ペンタメチル−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−5スルホニルイミノ]−メチル}−アミノ)−ペンタノイル]−ピペラジン−1−カルボン酸エチルエステル(Z)の合成
ジクロロメタン(90mL)中化合物Y(20.2g、30.2mmol)の溶液を、1,4−ジオキサン(90mL、363.3mmol)中4.0NのHClで処置し、そして室温で2時間、撹拌した。次に、減圧下でほとんどのジクロロメタンを取り出し、そしてEtO(約1L)を添加した。得られた沈殿物を濾過して取り出し、EtOで洗浄し、そして減圧下で乾燥して、化合物Z(17.8g、30.2mmol)を得た。LC−MS[M+H]567.8(C2642S+H、計算値:567.8)。
【0323】
調製26
4−[(S)−5−({アミノ−[(E)−2,2,4,6,7−ペンタメチル−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−5−スルホニルイミノ]−メチル}−アミノ)−2−(2,4,6−トリイソプロピル−ベンゼンスルホニルアミノ)−ペンタノイル]−ピペラジン−1−カルボン酸エチルエステル(AA)の合成
THF(7mL)中化合物Z(1.0g、1.8mmol)の溶液に、3.1NのNaOH水溶液(4.0mL)を添加し、そして5分間、撹拌した。反応混合物を約5℃にまで冷却し、次いで、THF(5mL)中トリプシル(tripsyl)クロリド(2.2g、7.3mmol)の溶液を滴下で添加し、そして室温で1晩(約18時間)撹拌した。反応混合物をHO(130mL)で希釈し、2%HSO(15mL)で酸性化し、そしてEtOAc(3×80mL)で抽出した。有機層を合わせ、そしてHO(2×400mL)、飽和NaHCO(100mL)、HO(200mL)および塩水(200mL)で洗浄した。有機層を分離し、MgSO上で乾燥させ、そして減圧下で溶媒を取り出して、(2.9g)の粗生成物を得た。これを、順相フラッシュクロマトグラフィー(5〜10%MeOH/DCM)によって精製して、化合物AA(0.52g、1.0mmol)を得た。LC−MS[M+H]833.8(C4164+H、計算値:834.1)。
【0324】
(S)−エチル4−(5−グアニジノ−2−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホンアミド)ペンタノイル)ピペラジン−1−カルボキシレート(化合物102)の合成
5%m−クレゾール/TFA(40ml)の溶液を、室温で化合物AA(3.73g、3.32mmol)に添加した。45分間、撹拌した後、溶媒を減圧下で取り出した。残渣をジクロロメタン(100ml)に溶解し、HO(3×200mL)および塩水(200mL)で洗浄した。有機層を分離し、MgSO上で乾燥させ、次いで溶媒を減圧下で取り出した。残渣をジクロロメタン(約5mL)に溶解し、次いでヘキサン(約250mL)を添加し、そして沈殿物を形成させた。これをヘキサンで洗浄し、そして減圧下で乾燥して、粗生成物(1.95g)を得た。粗生成物を、逆相HPLCによって精製した[カラム:VARIAN、LOAD&LOCK、L&L4002−2、パッキング:Microsob100−10C18、注入容積:約15mL、注入流速:20mL/min、100%A、(水/0.1%TFA)、流速:100mL/min、分画:30秒間(50mL)方法:25%B(MeCN/0.1%TFA)/70%B/98分/100ml/min/254nm]。減圧下で、純粋画分から溶媒を取り出した。2×i−PrOH(50ml)を伴う共エバポレーションによって、微量の水を取り出した。残渣を最小量のi−PrOHに溶解し、そしてEtO中2MのHClで沈殿させた。生成物を濾過して取り出し、そしてEtOで洗浄し、そして減圧下で乾燥して、化合物102のHCl塩(0.72g、35%収率、99.8%純度)を得た。LC−MS[M+H]581.6(C2848S+H、計算値:581.7)。
【0325】
実施例16
(S)−エチル1−(5−グアニジノ−2−(ナフタレン−2−スルホンアミド)ペンタノイル)ピペリジン−4−カルボキシレートHCl塩(化合物103)の合成
【化19】

調製27
1−[boc−Arg(Pbf)]−ピペリジン−4−カルボン酸エチルエステル(BB)の合成
DMF(15mL)中Boc−Arg(Pbf)−OH(3.4g、6.36mmol)およびHATU(2.9g、7.63mmol)の溶液に、DIEA(7.4mL、42.4mmol)を添加し、そして反応混合物を10分間、室温で撹拌した。DMF(6mL)中エチルイソニペコテート(1.0g、6.36mmol)の溶液を、滴下で反応混合物に添加した。反応混合物を、室温で1時間、撹拌し、次いで、酢酸エチル(150mL)で希釈し、そして水(500mL)を注いだ。生成物を酢酸エチル(2×100mL)で抽出した。有機層を、0.1NのHCl水溶液(200mL)、2%重炭酸ナトリウム水溶液(200mL)、水(200mL)および塩水(200mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、次いで減圧下でエバポレートした。得られた油性生成物を、減圧下で1晩乾燥して、粘性固体として化合物BB(3.7g、5.57mmol)を得た。LC−MS[M+H]666.5(C3251S+H、計算値:666.7)。化合物BBを、さらなる精製を伴わずに使用した。
【0326】
調製28
1−[Arg(Pbf)]−ピペリジン−4−カルボン酸エチルエステルHCl塩(CC)の合成
ジクロロメタン(25mL)中化合物BB(4.7g、7.07mmol)の溶液に、ジオキサン(25.0mL、84.84mmol)中4NのHClを添加し、そして反応混合物を、室温で2時間、撹拌した。反応混合物を、減圧下で、約20mLの溶媒にまで濃縮し、次いで、ジエチルエーテル(250mL)で希釈して、白色の細かい沈殿物を生成させた。反応混合物を、1時間、撹拌し、そして固体をエーテル(50mL)で洗浄し、そして高真空度下で1晩乾燥して、細かい粉末として化合物CC(4.3g、7.07mmol)を得た。LC−MS[M+H]566.5(C2743S+H、計算値:566.7)。
【0327】
調製29
1−[5(S)−(N`−Pbf−グアニジノ)−2−(ナフタレン−2−スルホニルアミノ)−ペンタノイル]−ピペリジン−4−カルボン酸エチルエステル(DD)の合成
THF(5mL)および水(3mL)の混合物中化合物CC(1.1g、1.6mmol)およびNaOH(260mg、5.9mmol)の溶液に、THF(10mL)中2−ナフタロスルホニルクロリド(0.91g、2.5mmol)の溶液を、約5℃で撹拌しながら滴下で添加した。反応混合物を室温で1時間、撹拌し、次いで、水(5mL)で希釈した。1NのHCl水溶液(5mL)を添加して、pH約3を得た。さらなる水を添加(20mL)し、そして生成物を酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。有機層を取り出し、次いで、2%重炭酸ナトリウム水溶液(50mL)、水(50mL)および塩水(50mL)で洗浄した。抽出物を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、そして減圧下でエバポレートした。形成した油性生成物を、減圧下で1晩乾燥して、油性泡状固体として化合物DD(1.3g、1.6mmol)を得た。LC−MS[M+H]756.5(C3749+H、計算値:756.7)。
【0328】
(S)−エチル1−(5−グアニジノ−2−(ナフタレン−2−スルホンアミド)ペンタノイル)ピペリジン−4−カルボキシレートHCl塩(化合物103)の合成
フラスコに、化合物DD(1.3g、1.6mmol)を添加し、次いで、5%m−クレゾール/TFA(10mL)で処置した。反応混合物を室温で1時間、撹拌した。次に、反応混合物を、5mLの容積にまで、減圧下で濃縮した。次いで、ジエチルエーテル(200mL)を残渣に添加し、そして細かい白色の沈殿物を形成させた。沈殿物を濾過して取り出し、そしてエーテル(2×25mL)で洗浄した。得られた固体を減圧下で1晩乾燥して、粗物質を得、調製用逆相HPLCによってこれを精製した。[Nanosyn−Pack Microsorb(100−10)C−18カラム(50×300mm);流速=100ml/min;注入容積12ml(DMSO−水、1:1、v/v);移動相A:100%水、0.1%TFA;移動相B:100%ACN、0.1%TFA;290分における5%B〜55%Bの勾配溶離、254nmでの検出]。所望の化合物を含有する画分を合わせ、そして減圧下で濃縮した。残基をi−PrOH(50ml)に溶解し、そして減圧下でエバポレートした(2回反復した)。次に、残渣をi−PrOH(5ml)に溶解し、そして2NのHCl/エーテル(100ml、200mmol)で処置して、白色の沈殿物を得た。それを減圧下で1晩乾燥して、白色固体として化合物103(306mg、31%収率、95.7%純度)を得た。LC−MS[M+H]504.5(C2433S+H、計算値:504.6)。
【0329】
実施例17
(S)−エチル1−(5−グアニジノ−2−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホンアミド)ペンタノイル)ピペリジン−4−カルボキシレートHCl塩(化合物104)の合成
【化20】

調製30
1−[5(S)−(N`−Pbf−グアニジノ)−2−(2,4,6−トリイソプロピル−ベンゼンスルホニルアミノ)−ペンタノイル]−ピペリジン−4−カルボン酸エチルエステル(EE)の合成
THF(5mL)および水(4mL)の混合物中化合物CC(1.1g、1.6mmol)およびNaOH(420.0mg、10.4mmol)の溶液に、2,4,6−トリイソプロピル−ベンゼンスルホニルクロリド(2.4g、8.0mmol)の溶液を、撹拌しながら滴下で添加し、そして約5℃で維持した。次いで、反応混合物を、反応に進行をモニタリングしながら、室温で1時間、撹拌し、次いで、水(20mL)で希釈し、そして1NのHCl水溶液(5mL)でpH約3にまで酸性にした。さらなる水を添加(30mL)し、そして生成物を酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。有機層を2%重炭酸ナトリウム水溶液(50mL)、水(50mL)および塩水(50mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、そして減圧下でエバポレートした。形成した油性残渣を、減圧下で1晩乾燥して、油性物質として化合物EE(1.0g、1.2mmol)を得た。LC−MS[M+H]832.8(C4265+H、計算値:832.7)。
【0330】
(S)−エチル1−(5−グアニジノ−2−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホンアミド)ペンタノイル)ピペリジン−4−カルボキシレートHCl塩(化合物104)の合成
フラスコに、化合物EE(2.3g、2.8mmol)を添加し、次いで、5%m−クレゾール/TFA(16mL)で処置した。反応混合物を室温で1時間、撹拌した。次いで、反応混合物を、5mLの容積にまで、減圧下で濃縮した。ヘキサン(200mL)を残渣に添加し、そしてデカンテーションにより取り出して、油性の沈殿物を得た。生成物を、調製用逆相HPLCによって精製した。[Nanosyn−Pack Microsorb(100−10)C−18カラム(50×300mm);流速=100ml/min;注入容積15ml(DMSO−水、1:1、v/v);移動相A:100%水、0.1%TFA;移動相B:100%ACN、0.1%TFA;90分における35%B〜70%Bの勾配溶離、254nmでの検出]。所望の化合物を含有する画分を合わせ、そして減圧下で濃縮した。残基をi−PrOH(100ml)に溶解し、そして減圧下でエバポレートした(2回反復した)。残渣をi−PrOH(5ml)に溶解し、そして2NのHCl/エーテル(100ml、200mmol)で処置して、油性の残渣を得た。それを減圧下で1晩乾燥して、粘性固体として化合物104(1.08g、62.8%)を得た。LC−MS[M+H]580.6(C2949S+H、計算値:580.8)。
【0331】
実施例18
(S)−6−(4−(5−グアニジノ−2−(ナフタレン−2−スルホンアミド)ペンタノイル)ピペラジン−1−イル)−6−オキソヘキサン酸(化合物105)の合成
【化21】

調製31
6−{4−[(S)−5−({アミノ−[(E)−2,2,4,6,7−ペンタメチル−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−5−スルホニルイミノ]−メチル}−アミノ)−2−(ナフタレン−2−スルホニルアミノ)−ペンタノイル]−ピペラジン−1−イル}−6−オキソ−ヘキサン酸メチルエステル(FF)の合成
CHCl(50mL)中化合物W(1.5g、2.08mmol)の溶液に、DIEA(1.21mL、4.16mmol)を添加し、続いてアジポイルクロリド(0.83mL、6.93mmol)を滴下で添加した。反応混合物を室温で1晩(約18時間)、撹拌した。減圧下で溶媒を取り出し、そして残渣を減圧下で乾燥させて、化合物FF(2.1g、量は定量値を超える)を得た。LC−MS[M+H]827.5(C4054+H、計算値:827.3)。化合物FFを、さらなる精製を伴わずに使用した。
【0332】
調製32
6−{4−[(S)−5−({アミノ−[(E)−2,2,4,6,7−ペンタメチル−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−5−スルホニルイミノ]−メチル}−アミノ)−2−(ナフタレン−2−スルホニルアミノ)−ペンタノイル]−ピペラジン−1−イル}−6−オキソヘキサン酸(GG)の合成
THF(5mL)、HO(5mL)中化合物FF(2.1g、2.08mmol)の溶液に、2MのLiOH水溶液(6mL)を添加した。反応混合物を室温で2時間、撹拌した。溶媒を減圧下で取り出し、次いで、残渣を、水(約50mL)に溶解し、飽和NaHSO水溶液(約100ml)で酸性にし、そしてEtOAc(2×100ml)で抽出した。有機層をNaSO上で乾燥させ、そして溶媒を取り出すことにより、化合物GG(1.72g、2.08mmol)を得た。LC−MS[M+H]813.5(C3952+H、計算値:813.3)。化合物GGを、さらなる精製を伴わずに使用した。
【0333】
(S)−6−(4−(5−グアニジノ−2−(ナフタレン−2−スルホンアミド)ペンタノイル)ピペラジン−1−イル)−6−オキソヘキサン酸(化合物105)の合成
5%m−クレゾール/TFA(25ml)の溶液を、室温で化合物GG(1.72g、2.08mmol)に添加した。30分間、撹拌した後、反応混合物を、EtO(約200mL)の添加により沈殿させた。沈殿物を濾過し、EtOで洗浄し、そして減圧下で乾燥して、粗生成物を得た。粗生成物を、調製用逆相HPLCによって精製した[カラム:VARIAN、LOAD&LOCK、L&L4002−2、パッキング:Microsob100−10C18、注入容積:約25mL、注入流速:20mL/min、95%A、(水/0.1%TFA)、流速:100mL/min、分画:30秒間(50mL)方法:5%B(MeCN/0.1%TFA)/5分/25%B/20分/25%B/15分/50%B/25分/100ml/min/254nm]。減圧下で、純粋画分から溶媒を取り出した。i−PrOH(25ml)を伴う共エバポレーションによって、微量の水を取り出した(2回反復した)。残渣を最小量のi−PrOHに溶解し、次いで、EtO(約50mL)中2MのHClを添加し、そしてEtO(約250mL)で希釈した。形成した沈殿物を濾過して取り出し、そしてEtOで洗浄し、そして減圧下で乾燥して、化合物105のHCl塩として生成物(0.74g、59%収率、98.9%純度)を得た。LC−MS[M+H]561.4(C2636S+H、計算値:561.2)。
【0334】
実施例19
3−(4−カルバムイミドイルフェニル)−2−オキソプロパン酸(化合物107)の合成
化合物107、即ち、3−(4−カルバムイミドイルフェニル)−2−オキソプロパン酸は、Richter P et al,Pharmazie,1977,32,216−220およびそれに含有される参考文献に記載の方法のような当業者に既知の方法を使用して、生成することができる。実施例7において使用した化合物107の純度は、76%と見積もられ、見積もり値は、HPLCによってこの化合物の低いUV吸収性に起因した。質量スペクトルデータ:LC−MS[M+H]207.0(C1010+H、計算値:207.1)。
【0335】
実施例20
(S)−5−(4−カルバムイミドイルベンジルアミノ)−5−オキソ−4−((R)−4−フェニル−2−(フェニルメチルスルホンアミド)ブタンアミド)ペンタン酸(化合物108)の合成
【化22】

【0336】
調製33
(S)−4−tert−ブトキシカルボニルアミノ−4−(4−シアノ−ベンジルカルバモイル)−酪酸ベンジルエステル(HH)の合成
DMF(50ml)中Boc−Glu(OBzl)−OH(7.08g、21.0mmol)、BOP(9.72g、22.0mmol)およびDIEA(12.18ml、70.0mmol)の溶液を、室温で20分間維持し、続いて、4−(アミノメチル)ベンゾニトリルヒドロクロリド(3.38g、20.0mmol)を添加した。反応混合物を室温でさらに1時間、撹拌し、そしてEtOAc(500ml)で希釈した。得られた溶液を、水(100ml)、5%NaHCO水溶液(100ml)および水(2×100ml)で抽出した。有機層をMgSO上で乾燥させ、エバポレートし、そして減圧下で乾燥させて、黄色がかったオイルとして化合物HH(9.65g、収量が定量値を超えた)を提供した。LC−MS[M+H]452.0(C2529+H、計算値:452.4)。化合物HHを、さらなる精製を伴わずに使用した。
【0337】
調製34
(S)−4−tert−ブトキシカルボニルアミノ−4−[4−(N−ヒドロキシカルバムイミドイル)−ベンジルカルバモイル]−酪酸ベンジルエステル(II)の合成
エタノール(無水、150ml)中化合物HH(9.65g、20.0mmol)、ヒドロキシルアミンヒドロクロリド(2.10g、30.0mmol)およびDIEA(5.22ml、30.0mmol)の溶液を、6時間、還流した。反応混合物を室温にまで冷却し、そしてさらに16時間、撹拌し、次いで、溶媒を、減圧下でエバポレートした。得られた残渣を減圧下で乾燥して、黄色がかったオイルとして化合物II(14.8g、収量が定量値を超えた)を提供した。LC−MS[M+H]485.5(C2532+H、計算値:485.8)。化合物IIを、さらなる精製を伴わずに使用した。
【0338】
調製35
(S)−4−tert−ブトキシカルボニルアミノ−4−[4−(N−アセチルヒドロキシカルバムイミドイル)−ベンジルカルバモイル]−酪酸ベンジルエステル(JJ)の合成
酢酸(100ml)中化合物II(14.8g、20.0mmol)および無水酢酸(5.7ml、60.0mmol)の溶液を、室温で45分間、撹拌し、次いで、溶媒を、減圧下でエバポレートした。得られた残渣を、EtOAc(300ml)で希釈し、そして水(2×75ml)および塩水(75ml)で抽出した。有機層をMgSO上で乾燥させ、エバポレートし、そして減圧下で乾燥させて、黄色がかった固体として化合物JJ(9.58g、18.2mmol)を提供した。LC−MS[M+H]527.6(C2734+H、計算値:527.9)。化合物JJを、さらなる精製を伴わずに使用した。
【0339】
調製36
(S)−4−[4−(N−アセチルヒドロキシカルバムイミドイル)−ベンジルカルバモイル]−酪酸ベンジルエステル(KK)の合成
化合物JJ(9.58g、18.2mmol)を1,4−ジオキサン(50ml)に溶解し、そして4NのHCl/ジオキサン(50ml、200mmol)により室温で1時間、処置した。次に、溶媒を、減圧下でエバポレートした。得られた残渣を、エーテル(200ml)と共に粉砕した。得られた沈殿物を濾過し、エーテル(100ml)およびヘキサン(50ml)で洗浄し、そして減圧下で乾燥して、オフホワイト色固体として化合物KK(9.64g、収量が定量値を超えた)を提供した。LC−MS[M+H]426.9(C2226+H、計算値:427.3)。化合物KKを、さらなる精製を伴わずに使用した。
【0340】
調製37
(R)−4−フェニル−2−フェニルメタンスルホニルアミノ−酪酸(LL)の合成
1,4−ジオキサン(80ml)および水(50ml)の混合物中D−ホモ−フェニルアラニン(10.0g、55.9mmol)およびNaOH(3.35g、83.8mmol)の溶液を、約5℃にまで冷却し、続いて、pH>10を維持しながら、α−トルエンスルホニルクロリド(16.0g、83.8mmol;3.2gずつ5部分)および1.12MのNaOH(50ml、55.9mmol;10mlずつ5部分)を交互に添加した。反応混合物を、2%HSO水溶液で、pH=約2にまで酸性にした。得られた溶液を、EtOAc(2×200ml)で抽出した。有機層を水(3×75ml)で洗浄し、そしてMgSO上で乾燥させ、次いで、溶媒を減圧下でエバポレートした。得られた残渣を、減圧下で乾燥して、白色固体として化合物LL(12.6g、37.5mmol)を提供した。LC−MS[M+H]334.2(C1719NOS+H、計算値:333.4)。化合物LLを、さらなる精製を伴わずに使用した。
【0341】
調製38
(S)−4−[4−(N−アセチルヒドロキシカルバムイミドイル)−ベンジルカルバモイル]−4−((R)−4−フェニル−2−フェニルメタンスルホニルアミノ−ブチリルアミノ)−酪酸ベンジルエステル(MM)の合成
DMF(250ml)中化合物LL(5.9g、17.8mmol)、化合物KKジヒドロクロリド(18.0mmol)、BOP(8.65g、19.6mmol)およびDIEA(10.96ml、19.6mmol)の溶液を、室温で2時間、撹拌した。反応混合物を、EtOAc(750ml)で希釈し、そして水(200ml)で抽出した。形成した沈殿物を濾過し、EtOAc(200ml)および水(200ml)で洗浄し、そして室温で1晩(約18時間)乾燥させて、オフホワイト色固体として化合物MM(8.2g、11.0mmol)を提供した。LC−MS[M+H]743.6(C3943S+H、計算値:743.9)。化合物MMを、さらなる精製を伴わずに使用した。
【0342】
(S)−5−(4−カルバムイミドイルベンジルアミノ)−5−オキソ−4−((R)−4−フェニル−2−(フェニルメチルスルホンアミド)ブタンアミド)ペンタン酸(化合物108)の合成
化合物MM(8.0g、10.77mmol)を酢酸(700ml)に溶解し、続いて、水(50ml)中懸濁液としてPd/C(5%wt、3.0g)を添加した。反応混合物を、室温で3時間、水素化(Parr装置、5psi)に供した。触媒を、焼結ガラス漏斗上のCeliteのパッドにおいて濾過し、そしてメタノールで洗浄した。濾液を減圧下でエバポレートして、無色のオイルとして化合物108を提供した。LC−MS[M+H]594.2(C3035S+H、計算値:594)。得られたオイルを水(150ml)に溶解し、そしてHPLC精製に供した。[Nanosyn−Pack YMC−ODS−A(100−10)C−18カラム(75×300mm);流速=250ml/min;注入容積150ml;移動相A:100%水、0.1%TFA;移動相B:100%アセトニトリル、0.1%TFA;4分における10%Bでの均一濃度溶離、18分における24%Bまでの勾配溶離、20分における24%Bでの均一濃度溶離、溶出68分における24%B〜58%Bの勾配溶離;254nmでの検出]。所望の化合物を含有する画分を合わせ、そして減圧下で濃縮した。残渣をi−PrOH(75ml)に溶解し、そして減圧下でエバポレートして(手順を2回反復した)、白色固体として化合物108(4.5g、70%収率、98.0%純度)を提供した。LC−MS[M+H]594.2(C3035S+H、計算値:594)。保持時間:3.55分。
【0343】
−[Chromolith SpeedRod RP−18eC18カラム(4.6×50mm);流速1.5ml/min;移動相A:0.1%TFA/水;移動相B0.1%TFA/アセトニトリル;5%B〜100%Bで9.6分間の勾配溶離、検出254nm]。
【0344】
本発明について、その特定の実施形態を参考にして説明してきたが、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更を行ってもよく、かつ同等のものと置き換えてもよいことが、当業者によって理解されるべきである。加えて、本発明の対照、趣旨および範囲に特定の状況、材料、組成物、プロセス、処理工程または工程を適応するために、多くの改変がなされ得る。そのような改変は、本明細書に添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリプシンインヒビターおよび一般式(I)
X−C(O)−NR−(C(R)(R))−NH−C(O)−CH(R)−NH(R
(I)
の化合物またはその薬学的に許容できる塩を含んでなる医薬組成物であって、式中:
Xは、フェノール性オピオイドの残基を表し、ここで、前記フェノール性水酸基の水素原子は、−C(O)−NR−(C(R)(R))−NH−C(O)−CH(R)−NH(R)に対する共有結合によって置き換えられ;
は、(1−4C)アルキル基を表し;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子または(1−4C)アルキル基を表し;
nは2または3を表し;
は、−CHCHCHNH(C=NH)NHまたは−CHCHCHCHNHを表し、Rが付着する前記炭素原子の配置は、L−アミノ酸における配置に対応し;かつ
は、水素原子、N−アシル基、またはアミノ酸の残基、ジペプチド、あるいはアミノ酸もしくはジペプチドのN−アシル誘導体を表す
医薬組成物。
【請求項2】
前記フェノール性オピオイドは、オキシモルフォン、ヒドロモルフォンおよびモルヒネから選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
一般式(I)の前記化合物は、一般式(IV):
【化1】

またはその薬学的に許容できる塩を有し、式中:
は水素またはヒドロキシルであり;
はオキソ(=O)またはヒドロキシルであり;
点線は二重結合または単結合であり;
は、(1−4C)アルキル基を表し;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子または(1−4C)アルキル基を表し;
nは2または3を表し;
は、−CHCHCHNH(C=NH)NHまたは−CHCHCHCHNHを表し、Rが付着する前記炭素原子の配置は、L−アミノ酸における配置に対応し;かつ
は、水素原子、N−アシル基、またはアミノ酸の残基、ジペプチド、あるいはアミノ酸もしくはジペプチドのN−アシル誘導体を表す
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
は、メチルまたはエチル基を表す、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
およびRのそれぞれは、水素原子を表す、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
nは2を表す、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
は、−CHCHCHNHC(=NH)(NH)を表す、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
はN−アシル基を表す、請求項1〜7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記N−アシル基は、N−(1−4C)アルカノイル、N−ベンゾイルまたはN−ピペロニル基である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
は、アセチル、グリシニルまたはN−アセチルグリシニル基である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
はアセチル基である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記基−C(O)−CH(R)−NH(R)は、N−アセチルアルギニンである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
Xはヒドロモルフォンであり;Rはメチルであり;RおよびRのそれぞれは水素原子であり;nは2であり;Rは−CHCHCHNHC(=NH)(NH)であり;かつRはN−アセチル基である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記トリプシンインヒビターは、ダイズから誘導される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記トリプシンインヒビターは、アルギニンミミックまたはリジンミミックである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記アルギニンミミックまたはリジンミミックは合成化合物である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記トリプシンインヒビターは、式:
【化2】

(ここで:
は、−O−Qまたは−Q−COOHから選択され、ここで、Qは、C−Cアルキルであり;
は、NまたはCHであり;かつ
は、アリールまたは置換アリールである)
の化合物である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記トリプシンインヒビターは、式:
【化3】

(ここで:
は、−C(O)−COOHまたは−NH−Q−Q−SO−Cであって、ここで、
は、−(CH−COOHであり;
は、−(CH−Cであり;かつ
pは、1〜3の整数であり;かつ
rは、1〜3の整数である)
の化合物である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記トリプシンインヒビターは、
(S)−エチル4−(5−グアニジノ−2−(ナフタレン−2−スルホンアミド)ペンタノイル)ピペラジン−1−カルボキシレート;
(S)−エチル4−(5−グアニジノ−2−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホンアミド)ペンタノイル)ピペラジン−1−カルボキシレート;
(S)−エチル1−(5−グアニジノ−2−(ナフタレン−2−スルホンアミド)ペンタノイル)ピペリジン−4−カルボキシレート;
(S)−エチル1−(5−グアニジノ−2−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホンアミド)ペンタノイル)ピペリジン−4−カルボキシレート;
(S)−6−(4−(5−グアニジノ−2−(ナフタレン−2−スルホンアミド)ペンタノイル)ピペラジン−1−イル)−6−オキソヘキサン酸;
4−アミノベンズイミドアミド;
3−(4−カルバムイミドイルフェニル)−2−オキソプロパン酸;
(S)−5−(4−カルバムイミドイルベンジルアミノ)−5−オキソ−4−((R)−4−フェニル−2−(フェニルメチルスルホンアミド)ブタンアミド)ペンタン酸;
6−カルバムイミドイルナフタレン−2−イル4−(ジアミノメチレンアミノ)ベンゾエート;および
4,4’−(ペンタン−1,5−ジイルビス(オキシ))ジベンズイミドアミド
から選択される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
トリプシンインヒビターおよび一般式(I):
X−C(O)−NR−(C(R)(R))−NH−C(O)−CH(R)−NH(R
(II)
またはその薬学的に許容できる塩を含んでなる医薬組成物であって、式中:
Xは、フェノール性オピオイドの残基を表し、ここで、前記フェノール性水酸基の水素原子は、−C(O)−NR−(C(R)(R))−NH−C(O)−CH(R)−NH(R)に対する共有結合によって置き換えられ;
は、アルキル、置換アルキル、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールおよび置換アリールから選択され;
各Rが、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アシル、およびアミノアシルから独立して選択され;
各Rが、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アシル、およびアミノアシルから独立して選択されるか;
あるいはRおよびRは、それらが付着する炭素と共に、シクロアルキルまたは置換シクロアルキル基を形成するか、あるいは隣接する炭素原子上の2つのRまたはR基は、それらが付着する前記炭素原子と共に、シクロアルキルまたは置換シクロアルキル基を形成し;
nは2〜4の整数を表し;
は、−CHCHCHNH(C=NH)NHまたは−CHCHCHCHNHを表し、Rが付着する前記炭素原子の配置は、L−アミノ酸における配置に対応し;かつ
は、水素原子、N−アシル基、アミノ酸の残基、ジペプチド、アミノ酸もしくはジペプチドのN−アシル誘導体を表す
医薬組成物。
【請求項21】
一般式(II)の前記化合物は、一般式(V):
【化4】

またはその薬学的に許容できる塩を有し、式中:
は水素またはヒドロキシルであり;
はオキソ(=O)またはヒドロキシルであり;
点線は二重結合または単結合であり;
は、アルキル、置換アルキル、アリールアルキル、置換アリールアルキル、アリールおよび置換アリールから選択され;
各Rが、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アシル、およびアミノアシルから独立して選択され;
各Rが、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アシル、およびアミノアシルから独立して選択されるか;
あるいはRおよびRは、それらが付着する炭素と共に、シクロアルキルおよび置換シクロアルキル基を形成するか、あるいは隣接する炭素原子上の2つのRまたはR基は、それらが付着する前記炭素原子と共に、シクロアルキルまたは置換シクロアルキル基を形成し;
nは2〜4の整数を表し;
は、−CHCHCHNH(C=NH)NHまたは−CHCHCHCHNHを表し、Rが付着する前記炭素原子の配置は、L−アミノ酸における配置に対応し;かつ
は、水素原子、N−アシル基、アミノ酸の残基、ジペプチド、アミノ酸もしくはジペプチドのN−アシル誘導体を表す
請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
一般式(II)の前記化合物は、一般式(III):
X−C(O)−NR−(C(R)(R))−NH−C(O)−CH(R)−NH(R
(III)
またはその薬学的に許容できる塩を有し、式中:
Xは、フェノール性オピオイドの残基を表し、ここで、前記フェノール性水酸基の水素原子は、−C(O)−NR−(C(R)(R))−NH−C(O)−CH(R)−NH(R)に対する共有結合によって置き換えられ;
は、(1−4C)アルキル基を表し;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子または(1−4C)アルキル基を表し;
nは2または3を表し;
は、−CHCHCHNH(C=NH)NHまたは−CHCHCHCHNHを表し、Rが付着する前記炭素原子の配置は、L−アミノ酸における配置に対応し;かつ
は、水素原子、N−アシル基、アミノ酸の残基、ジペプチド、アミノ酸もしくはジペプチドのN−アシル誘導体を表す
請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項23】
一般式(III)の前記化合物は、一般式(VI):
【化5】

またはその薬学的に許容できる塩を有し、式中:
は水素またはヒドロキシルであり;
はオキソ(=O)またはヒドロキシルであり;
点線は二重結合または単結合であり;
は、(1−4C)アルキル基を表し;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子または(1−4C)アルキル基を表し;
nは2または3を表し;
は、−CHCHCHNH(C=NH)NHまたは−CHCHCHCHNHを表し、Rが付着する前記炭素原子の配置は、L−アミノ酸における配置に対応し;かつ
は、水素原子、N−アシル基、アミノ酸の残基、ジペプチド、アミノ酸もしくはジペプチドのN−アシル誘導体を表す
請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
アシルは置換アシルである、請求項20〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
nは2である、請求項20〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
は、メチルまたはエチル基である、請求項20〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
は、アセチル、ベンゾイル、マロニル、ピペロニル、スクシニル;N−アセチルアルギニンまたはN−アセチルリジンである、請求項20〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
およびRは水素原子である、請求項20〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
同じ炭素上に存在するRおよびRは、アルキルである、請求項20〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
同じ炭素上に存在するRおよびRは、スピロ環を形成する、請求項20〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
同じ炭素上に存在するRおよびRは、メチルである、請求項20〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
およびRは、分子内環化の速度をモジュレートし得る、請求項20〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
およびRは、電子吸引基または電子供与基を含んでなる、請求項20〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
−[C(R)(R)]n−は、−CH(CHF)CH(CHF)−;−CH(CHF)CH(CHF)−;−CH(CF)CH(CF)−;−CHCH(CF)−;−CHCH(CHF)−;−CHCH(CHF)−;−CHCH(F)CH−;−CHC(F2)CH−;−CHCH(C(O)NR2021)−;−CHCH(C(O)OR22)−;−CHCH(C(O)OH)−;−CH(CHF)CHCH(CHF)−;−CH(CHF)CHCH(CHF)−;−CH(CF)CHCH(CF)−;−CHCHCH(CF)−;−CHCHCH(CHF)−;−CHCHCH(CHF)−;−CHCHCH(C(O)NR2324)−;−CHCHCH(C(O)OR25)−;および−CHCHCH(C(O)OH)−から選択され、式中、R20、R21、R22およびR23は、それぞれ独立して、水素または(1−6C)アルキルを表し、そしてR24およびR25は、それぞれ独立して、(1−6C)アルキルを表す、請求項20〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項35】
およびRのうち一方はアミノアシルである、請求項20〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項36】
およびRのうち一方は、
【化6】

であって;ここで、各R10は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、およびアシルから選択され、そしてR11は、アルキルまたは置換アルキルである、請求項20〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項37】
およびRのうち一方は、
【化7】

であって;ここで、R10は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、およびアシルから選択される、請求項20〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項38】
10はアシルである、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記トリプシンインヒビターは、ダイズから誘導される、請求項20〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記トリプシンインヒビターは、アルギニンミミックまたはリジンミミックである、請求項20〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記アルギニンミミックまたはリジンミミックは合成化合物である、請求項40に記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記トリプシンインヒビターは、式:
【化8】

(ここで:
は、−O−Qまたは−Q−COOHから選択され、ここで、Qは、C−Cアルキルであり;
は、NまたはCHであり;かつ
は、アリールまたは置換アリールである)
の化合物である、請求項20〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記トリプシンインヒビターは、式:
【化9】

(ここで:
は、−C(O)−COOHまたは−NH−Q−Q−SO−Cであって、ここで、
は、−(CH−COOHであり;
は、−(CH−Cであり;かつ
pは、1〜3の整数であり;かつ
rは、1〜3の整数である)
の化合物である、請求項20〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記トリプシンインヒビターは、
(S)−エチル4−(5−グアニジノ−2−(ナフタレン−2−スルホンアミド)ペンタノイル)ピペラジン−1−カルボキシレート;
(S)−エチル4−(5−グアニジノ−2−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホンアミド)ペンタノイル)ピペラジン−1−カルボキシレート;
(S)−エチル1−(5−グアニジノ−2−(ナフタレン−2−スルホンアミド)ペンタノイル)ピペリジン−4−カルボキシレート;
(S)−エチル1−(5−グアニジノ−2−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホンアミド)ペンタノイル)ピペリジン−4−カルボキシレート;
(S)−6−(4−(5−グアニジノ−2−(ナフタレン−2−スルホンアミド)ペンタノイル)ピペラジン−1−イル)−6−オキソヘキサン酸;
4−アミノベンズイミドアミド;
3−(4−カルバムイミドイルフェニル)−2−オキソプロパン酸;
(S)−5−(4−カルバムイミドイルベンジルアミノ)−5−オキソ−4−((R)−4−フェニル−2−(フェニルメチルスルホンアミド)ブタンアミド)ペンタン酸;
6−カルバムイミドイルナフタレン−2−イル4−(ジアミノメチレンアミノ)ベンゾエート;および
4,4’−(ペンタン−1,5−ジイルビス(オキシ))ジベンズイミドアミド
から選択される、請求項20〜23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項45】
疼痛の治療に使用するための、請求項1〜44のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項46】
請求項1〜45のいずれか一項に記載の医薬組成物の有効量を投与する工程を含んでなる、治療を必要とする患者において疼痛を治療する方法。
【請求項47】
疼痛治療のための医薬品の製造における、請求項1〜45に記載の医薬組成物のいずれか1つの使用。
【請求項48】
フェノール性オピオイドプロドラッグを含有する組成物の薬物乱用の可能性を低減するための方法であって:式I〜VIの化合物とトリプシンインヒビターとを組み合わせる工程を含んでなり、ここで、前記トリプシンインヒビターは、トリプシンの添加によって、フェノール性オピオイドプロドラッグからフェノール性オピオイドを放出する使用者の能力を低減する、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2012−509846(P2012−509846A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532298(P2011−532298)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/061068
【国際公開番号】WO2010/045599
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(509308986)ファーマコフォア,インク. (4)
【氏名又は名称原語表記】PHARMACOFORE,INC.
【Fターム(参考)】